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表紙絵から

 

池田げんえい/1946年神奈川県生まれ。日本児童出版美術家連盟、現代童画会会長。創作『鬼の会』同人。日本デザイナー学院講師。はり絵作家。

 

● 平成・東海道五拾三次

その29 「見附」

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天竜川現景。中州では、かつて船頭たちが旅人を待ちかまえていたのだろうか。

 

―天竜川絶景―

今朝は右足の指がみごとに腫れ上がっていた。すぐさま天竜川に向かうが何をするにもストップモーションだ。磐田あたりはどこも真っすぐな道が多く、先々まで見通しがよい。そして道の間にこれも碁盤の目のようにきれいに畑が続いている。真っすぐな道ってこんなにも疲れるのか…、マラソンで1人取り残された気分だ。鷺だろうか、白い鳥に誘導されてどうにか到着した頃には、乱れたシーツのようだった雲もみごとに切れていた。

この天竜川には2筋の川があり大天竜、小天竜といわれている。何ともきれいな色の川。そして川岸には七色の砂利。ボクは無意識にいくつかの石コロを拾っていた。近くでは白い鳥が水とたわむれている。こんな情景にピタリとはまった自分に気付いて、「女高生みたいだナ」とすぐに石を捨てた。

 

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安藤広重絵「見附」

木曾の山峡を流れ下る激流は、ここで二つに分かれる。旅人はみな、船で渡る。遠景の霧にかすむ森は、広重の得意とする「拭きぼかし」という手法を使っている。

 

 

 

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