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施薬院・施療院が人々を生老病死の苦しみから救ったように、門徒の病気や心の病を癒し、いかに生きるべきか(=死ぬべきか)に応えるのが、仏教者としての務めなのではないでしょうか。

二〇年前、私は日本人的なものの考え方に立って、日常的な悩みや苦しみを癒せるのは仏教であると確信し、臨床仏教学を提言しました。最近、ようやく臨床仏教学会が準備されるまでになりました。また仏教ビハーラ(ホスピス)も各地にできましたし、電話相談を通して実践してきたことが、少しずつ認められてきたようです」

 

ボランティア活動は自分の明日の糧になる

 

現在、武治さんはフリーの医学ジャーナリストとして独立、株式会社ヘルスプランニング西来を設立。医療・福祉・老人問題・死の臨床問題などについての執筆、講演活動を行っている。平成六年にはこれまでの業績が認められて、母校の龍谷大学校友会から最高賞の第五回龍谷賞を受賞したほか、数々の栄誉に輝いた。

はじめの頃は「こんな未熟な自分が相談に乗ってもいいのだろうか」と、どんな問題にも対応できるように広辞苑や百科事典などを電話の前に総動員して緊張していたみわさんも、ベテランの域に達してきた。「電話相談をしたお陰で、人の話を聞くことができるようになりました。長い間続けられたのは、趣味の川柳があったから。句会などで短い時間に句を作る訓練をしていたので、切り替えが早いんです」と笑う。家事・育児と、果てしのない電話相談を両立させながら、山室静、川上三太郎両氏の愛弟子として川柳に励み、三冊の句文集もものにした。

「ボランティア活動は、犠牲的精神で人のためにやるものではありません。自分の本来の仕事にさらなる力が湧くその源泉でもあるのです。日本人はそういう教育を受けていないし、政策もない。意識を変えて行く施策が必要です」と熱っぽく語る武治さん。

「この人は本当に好きなことだけをやってきましたものね(笑)。もちろん、私もやってきました」。みわさんの目が満足そうに輝いた。

 

 

 

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