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料理も掃除も洗濯も、みんなでやるのが基本

 

橋さんが働く『グループホームしせい』は、独立型のものではなく、特別養護老人ホーム(以下特養)やデイケアセンターなどを擁する高齢者総合福祉施設・至誠ホーム(東京・立川市)の一事業として、二年前に開設されたもの。総合受付を訪ねると、グループホームフロアはこの施設の三階の一角にあるといわれる。エレベーターをのぼり、特養のフロアを通り抜け、渡り廊下を過ぎてドアを開けると……。目の前には、いきなり、ウッディ(木目)調の広いリビングが。よく見回せば、そこには使いやすそうなシステムキッチンや、ダイニングテーブル、ソファなどが置かれ、なんと、カラオケセットもあるではないか。そして、このリビングを囲むように、各人の居室が配されていた。従来の「痴呆のお年寄りのための施設」というイメージをはるかに越えて、まさしく、ここは"家"そのものだった。

取材に訪れた金曜日の午前中は、棟続きの特養のフロアで陶芸教室が開かれており、グループホームで暮らすお年寄りの多くは、その教室に参加するために出かけていた。ただ、参加は強制ではないので、美容室に行っている人も、離れて暮らすご主人とデート中の人も。また体調がすぐれず部屋で寝ている人もいるという。自分の家で生活しているのと同じように、自分の生活リズムで、好きに過ごせるのがここの大きな特徴だ。昼食どきになって、教室に参加していた一団が、スタッフに付き添われて戻ってきた。「おかえりなさ〜い」と、明るく声をかける橋さん。その後はみんなで昼食の支度、盛りつける人も、並べる人も、お茶を入れる人も、入居者のお年寄りたち。もちろん、スタッフも一緒になって支度を手伝う。

「ここでは料理を作るのも、洗濯をするのも、掃除をするのも、みんなで一緒にやるのが原則なんです。みなさん、何十年も主婦をやってきた方ばかりですから(入居者十名中、九名は女性)、何をや

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