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「新世紀都市ビジョン」

アジア大会で結集された市民の熱意を新たなまちづくりへ

 

堀田 広島市は日本で約三三〇〇ある自治体のなかでもボランティア活動、市民活動に大変に理解があり、連携が進んでいる自治体のひとつです。そうしたすばらしいネットワークを築き上げる原動力になられたのが平岡市長さんです。平岡市長さんは「平和の推進」ということで国際的にも大変に有名な方ですけれども、考えてみましたら、世界平和を実現するのも、地域社会を市民とネットワークを組んで大変温かいものにするのも精神は一緒ですよね。

平岡 そうですね。ただ、おほめに預かりましたが、広島市はまだまだ思うようなところまで行っておりません。市民にとってよい都市とは何かと考えた場合、道路や上下水道、学校、病院、スポーツ施設、美術館、といった都市基盤の整備もひとつの条件でしょう。ただ、やはり市民の方々にとってそこが温かい地域社会であると実感できることが非常に大切だと思っております。

堀田 まさにおっしゃるとおりですね。

平岡 私、都市というのは市民と行政との共同作品だと思っております。都市のたたずまい、雰囲気というのはまさにそこに生活をしている市民意識の反映なんですね。市民を主人公としたまちづくりを行う。そのためには市民意識の変革、啓発も必要なのではないか、そんな思いで取り組んでおります。

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堀田 そもそも市長さんがそうしたお考えを推進していこうと思われた経緯はどのようなことだったのでしょう?

平岡 ご承知のように、広島というのは原爆によっていったん廃虚になった都市です。市民の努力と内外からの支援で今日の姿まで再建してきましたが、それはまさしく日本経済の高度成長と足並みをそろえての都市づくりでもあったわけです。その最高点が実は一九九四年の「第十二回アジア競技大会」でした。首都以外で初めて開かれた大会でしたし、広島市にとっては大変大きな国際的なイベントで、さまざまな都市基盤の整備をやや背伸びをしながらやってまいったんですね。大会はお陰様で成功裏に終わりましたが、さて次の都市の目標は一体何なのだろうかと。

堀田 なるほど。

平岡 地方都市で初めてやる大会を失敗して恥をかいてはいけないという思いもあって、大会では通訳、会場整理、あるいは会場周辺や街を花で飾るなど延べ二〇万人に及ぶさまざまなボランティア活動が展開されておりました。何とかこの芽を大事にしたい、一方、日本は間もなく高齢社会がやってくる。アジア大会で市民の方々が発揮されたあれだけのエネルギーをさらに今度はぜひ自分たちの地域の問題に向けていただき

 

 

 

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