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て浮上することになった。即ち、ヨーロッパのように船舶が幾つかの国の沿岸を航行する場合は、各国のVTSの運用制度の違い、VTS間の連携の問題等が航海者を悩ますこととなったのである。航海者の間からは必然的に運用制度の統一化の要望が生まれてくることになった。そういった背景があって、航行援助施設に関して世界的な統一を図ることを技術的な面で検討する機関としてはIALAが最も適切であるということになり、VTS技術委員会が設置されることになったのである。

しかし、実際にVTS委員会が発足してみると、その取り扱う範囲は予想以上に多岐にわたり、先ず世界のVTS案内(World VTS Guide)からVTSマニュアルの作成、VTS用語の統一、要員の養成、情報交換、資金問題、事故通報、等々問題は山積しているのが実情である。しかも、技術の進歩によって、新たに検討しなければならない問題も次々に出てきている。したがって、その検討に当たっては、IALAの正会員だけでは処理出来ない問題が多々あり、関連国際機関からも出席を求め、或いは工業会員の協力も得なければならない状況にある。出席者も、それぞれが代表する機関の業務に直接かかわる問題が多いので、発言も真剣であり、熱心でもある。

我が国の場合は隣接する他国のVTSが無く、要員配置についても他国とは条件が異なるので、協力を惜しむということはなかったが比較的関心が薄かった。しかし、情報交換や事故報告、AISの搭載義務、ECDISとの両立などの問題が取り上げられるに至って、これまでのように拱手傍観という訳にはいかなくなった。特に、VTSにおける後進国は技術の吸収に意欲的であり、また、先進国はそれに応える義務がある。しかも、急速に進歩している技術がどんどん取り入れられており、我が国としても安閑としていてよいという状況にはない。旅費の問題もからめて、今後どのように対応してゆくかは切実な問題であると言える。

 

5.委員長の交代

 

委員長の任期は総会から次の総会までとなっている。ハワイ会議以降、総会は4年ごとに開催されることになったので、その間半年ごとの技術委員会は8回開催されることになるが、今回は次のハンブルグ会議が来年6月に予定されているので、その前の3月に第9回委員会が開催されることになっている。その席で次期委員長の人選が行われるものと思われる。

 

 

 

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