水準で有意な相関)。
考察
1) 動的姿勢調節能力の測定と評価
本研究では、「体力測定項目」のなかで筆者らが助成初年度の報告において歩行能力や下肢筋力と高い相関を報告しながら、これまで十分検討していなかった平衡機能の測定に重点を置き、特に動的状態での調節能力が重要であるという藤原ら5)の報告をもとに動的平衡機能の評価方法を試作した。今回試作した方法は一定の移動視標に対する追従(トラッキング)過程を評価するものであり、それと前々報で用いた静的状態でのCFP動揺による平衡機能評価や下肢筋力等との関連について検討することを主な目的として13歳〜72歳の女性61名に測定を実施した。
その結果、安楽立位姿勢という静的状態でのCFP動揺と年齢、左右各脚の最大等尺性膝関節伸展筋力との間には有意な相関は認められなかったが、今回動的平衡機能の指標としたピークに対するズレに関しては特に左右方向条件、0.5Hz時の時間的ズレ(TL)と年齢間で1%水準の有意な相関が認められた(図7)。この左右方向、0.5Hz時のTLは3群で比較すると、0.1%水準で有意な差であった(図5)。
藤原ら5)は振動台に固定した床反力計上で閉眼、立位姿勢を保持した状態で振動台を振幅2.5cm、周波数0.5Hzで正弦波状に振動させたときのCFPの平均速度によって外乱刺激に対する適応性の観点から動的平衡機能を評価している。それによると、老人の平衡機能は若年者より有意に劣っていること、老人の平衡機能の適応能は若年者より劣っていること(例外者もいる)、平衡機能の適応性に性差はないものと思われることを報告している。本研究で得られた結果は動的平衡機能が年齢とともに低下するという点で上記の研究報告と一致している。
また、0.5Hzで最も顕著な有意差が見られた点に関して、藤原と池上4)は振動台を用いた場合、振幅2.5cm、振動周波数0.5Hzが平衡機能の差をよく検出できるとしている。上記の藤原らの研究では床面を振動させるという、被検者にとっては受動的な条件で測定を行っているが、本研究では眼前のモニターに提示された視標を自己のCFPで追従(トラッキング)するという能動的な条件で測定した。また、前後方向への0.5Hzでの移動時には3群間で有意な差は認められていない。したがって、左右方向への0.5Hzでの移動時に大きな差が観察された点については、先行研究と一致しているものの、その解釈には注意が必要なものと思われる。
本研究と同様な視標追従による動的姿勢調節能