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ては、新生児期と同様、離床期前半、脚の屈曲が強く行われた。しかし離床期後半、新生児期と異なり、積極的な脚伸展を示す内側広筋、腓腹筋の強い放電様相(下肢のパラシュート反応パターン)が多くみられ始めた。すなわち、この時期から不安定さを感じ始め、反射歩行に随意的なものが加味されてきたことが伺える。

 

2. 歩行習得初期(歩行習得1日目〜歩行習得5ヵ月頃)の筋電図的特徴(1997)

従来の歩行発達過程における足関節筋の筋電図的解析結果より、着地前の腓腹筋の強い放電パターンと、接床期の前脛骨筋の強い放電パターンは、不安定な歩行時に参画する筋電図パターンであることが判明してきた。この点から、歩行習得初期の特徴を検討した。

歩行習得前期(歩行習得1ヵ月頃まで)では、不安定さを示す接床期の前脛骨筋の強い放電や、着地前の腓腹筋の強い放電が多くみられたことから、非常に不安定な乳児歩行期と考えられる。歩行習得後期(歩行習得3ヵ月以降)では、不安定さを示す接床期の前脛骨筋の強い放電や、着地前の腓腹筋の強い放電は非常に少なくなったことから、少し安定した乳児歩行期、すなわち、幼児型歩行(体前傾姿勢ですり足的な歩行)への移行開始期と考えられる。

 

3. 歩行開始期(歩行習得1日目〜歩行習得1カ月頃)の筋電図的特徴(1998年)

独立歩行開始期(歩行習得1ヵ月頃まで)は、成人歩行に比し、過剰で特有の筋放電を示し、接床期・離床期とも乳児原始歩行と類似した筋電図パターンを示した。

接床期では、着地直後からpush offの間、中腰姿勢保持のため膝・股関節筋では、膝屈曲位保持(中腰)に働く一関節筋に強い放電がみられた。この間、体前傾姿勢保持に働く二関節筋の大腿直筋には放電はみられず、拮抗筋である大腿二頭筋に放電がみられる相反パターンが多く認められた。一部、体後傾姿勢保持に働く大腿直筋と大腿二頭筋の逆相反パターン、体直立姿勢保持に働く大腿直筋と大腿二頭筋の同時放電パターンが認められた。上記各種中腰保持姿勢(膝屈曲位で上体の各種姿勢)のバランスコントロールのため、前・後傾保持に働く腓腹筋と前脛骨筋の相反パターンと、足関節固定に働く両筋の同時放電パターンが認められた。離床期では、離床期前半、脚の屈曲が強く行われ、離床期後半、新生児期と異なり、積極的な脚伸展を示す内側広筋、腓腹筋の強い放電様相(下肢のパラシュート反応パターン)が多くみられた。すなわち、この時期にみられた筋電図パターンのバリエーションは様々な歩行制御のため参画したものと推測される。

上記の乳児歩行の筋電図パターンは、幼児・成人歩行にはみられず、歩行習得1ヵ月頃から減少・消失し始め、幼児型歩行の筋電図パターンに変化し始めることが判明した。それ故、我々は、歩行習得1ヵ月頃までみられた特有の筋電図パターン、すなわち中腰体前傾姿勢と着地前の積極的な脚伸展を示す放電様相を、従来の幼児型・成人型歩行と区別するため、独立歩行開始期の乳児型歩行パターンと定義することにした。

 

 

 

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