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過去の運動部活動経験が将来のスポーツ参加に関連をもつことは、すでにいくつかの研究で示唆されている(山口・池田1)、金崎・橋2)など)。落合3,4)は、中学・高校における運動部活動の経験のあり方が、将来にわたるスポーツ参加意欲や実際的なスポーツ参加に影響を与えているのではないかという視点から、中学・高校の運動部員や大学生を対象として一連の調査研究を行い、運動部活動への参加者の意識として次の7因子を抽出している。プレーや実力の向上可能性に関する自信や満足、課題設定や目標設定における主体性、運動部活動の楽しさと満足感、チームとしての実力や機能への満足感、指導者の人間性や指導法、運動部内での人間関係、運動部活動に対する周囲の評価。これらのうち、現在のスポーツ参加状況と有意な関連を有する因子は、?@プレーや実力の評価、?A楽しさ、?Bチームとしての機能、?C指導者、?D周囲の評価であった。

本研究では、過去2年間の研究結果を踏まえ、次の2点を明らかにすることを主たる目的として調査・分析を行った。

(1) 中学校で経験した過去の運動部活動への意識と現在のスポーツ参加状況との関連を明らかにする。

前回の調査では、中学・高校における運動部参加の状況(継続、退部、不参加)とその後のスポーツ参加状況を明らかにするために、運動部経験に関する同一内容の設問を中学用、高校用として用意し、それぞれに対して回答を依頼した。このため中学・高校ともに運動部経験がある者では、両方に回答する必要があり、運動部活動への意識に関する設問に中学、高校の区別を明確にして答えることが困難な一面をもっていた。今回は、中学校〜高校までの間での初めての運動部活動に限定して調査・分析を行うこととした。しかしながら、実際的なデータ数からみると運動部経験が高校のみのデータはきわめて少ないことから(838名中40名:前回の調査でも高校のみの運動部経験者は697名中33名であった)、本研究では、過去の運動都経験への意識と現在のスポーツ参加状況との関連を明らかにするための分析では中学校の運動部経験者のみを対象とすることとした。

(2) 過去の運動部活動への意識のうち、指導者に関わる部分と現在のスポーツ参加状況との関連を、指導者の効果性注1)と自己開放性注2)の観点を含めて分析する。

中学・高校の運動部活動は、スポーツの楽しさを味わう、集団の中での経験から学習する、積極的な自己意識を形成するなどの利点をもつと期待されているが、指導者のあり方がこれらの実現に大きな影響を与えていることが指摘されてきており(青木5)、桂・中込6)、伊藤7)など)、前回の研究でも指導者に関わる因子が抽出されている。今回の研究では、運動部の有能な指導者であったかどうかだけでなく(有効性)、どの程度自己を開いて生徒に接していたか(自己開放性)についても調査し、現在のスポーツ参加状況との関連を検討する。

 

研究方法

1. 調査期間

平成9年6月1日〜6月15日

 

2. 調査対象

国立大学一般学生:男子578名、女子260名、合計838名(必修科目「健康スポーツ実習」受講学生、表1のとおり)

 

3. 調査内容

現在のスポーツ参加状況と過去の運動部活動に関するアンケート調査を実施した。調査に際して、中学、高校ともに運動部活動経験がある対象者については中学校での運動部活動についての意識を回答するように依頼した。

アンケート調査内容の概要は、表2のとおりである。

 

研究結果

本研究では、性別、種目別(集団種目と個人種目との2カテゴリー)の集計も行ったが、これらの変数との関連では指導者に関わる項目以外では体系的な有意差が見いだされなかったので、結果の処理は指導者に関わる部分を除いては全体として行った。

 

 

 

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