LDは著しい活動を示し(図1)、運動強度を高めると活動レベルも高まり(図2)、Subj. A, Bでは投球動作との対比でみても活動が早期化している(図3)。2相は上腕骨が外旋する局面なので、この相でのLDの活動は伸張性であり、以後の内旋での活動レベルを高めるのに効果的と考えられる。また、上腕骨の外旋角度と投球スピードの間には高い正の相関がある10)といわれるが、必要以上に外旋されることはその後の内旋筋の出力にとっても、体幹からのエネルギー転移にとっても不利と考えられる。外旋に制動をかけるためにLDなどの内旋筋群が働く6)ことからすると、この活動開始の早期化は適当な外旋角度を維持するためにもなると考えられる。さらに、Mero et al.7)は、走速度を増加させると、それに応じて足の着地直前に腓腹筋活動が高まると報告している。これは、着地で受ける地面反力の増大に備えて予め筋のstiffnessを高めておくためであるし、地面に力を及ぼす局面で伸張効果が利用できる利点もあると述べている。また、Ito et al.5)は、走速度を高めると、着地時の伸張性活動になる局面で脚伸展筋群の活動量が大きくなると報告し、活動の大きさに応じて筋のstiffnessが高まり、その分大きな弾性エネルギーを蓄えられるとしている。以上のような、伸張性活動により短縮時の筋活動レベルを高める、適当な関節角度を維持する、筋のstiffnessを高めるといったメカニズムである。ただし、主働筋といわれるPMに活動開始の早期化がみられなかった理由については今後の検討課題である。
立ち幅跳びで強度を漸増させると、足底屈に働く筋の拮抗筋である前脛骨筋の活動量が増加する。この現象は腓腹筋との共収縮によって関節が可動