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低強度試行での値は、中、高強度での値よりもすべての筋で低く、中強度試行での値は、高強度での値よりも多くの筋で低かったが、Subj.AのECR,Subj.BのTRI,Subj.CのFCR,ECR,Subj.DのLD,FCR,ECRでは高強度と差がないかあるいは凌ぐ値を示した。

表3にボールリリース時刻を0とした投球動作各相の開始、終了時点、所要時間および各筋の活動開始時点を、図3には1〜4相までの所要時間を100%とした際のそれぞれの相対値を示す。強度の増加にともなって、2および3相の所要時間は短くなり、PMの活動開始時点はボールリリースに近づいた(表3)。投球動作の相との対比でみると、活動開始が早期化したのは、Subj.AのLD,BB,TRI,FCR,ECR,Subj.BのLD,BB,Subj.CのFCR,Subj.DのBB,TRI,FCR,ECRであった(図3)。

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論議

阿江たち1)は、垂直跳びで高く跳ぶようになるにつれて、その正仕事を担う筋は足関節まわりから股関節まわりへと移ると報告している。出力パワーが筋量に比例することからすれば、パワーを高めるために体幹に近い、量の多い筋を使うことは合理的と考えられる。また、宮西たち8)によると、投球動作でボールに伝えられるエネルギーの大部分は手関節の関節力パワーに起因しているが、そのパワーのほとんどは体幹や肩関節の運動によって生み出されたエネルギーが転移されたものという。すなわち、投球動作でもパワー源は体幹や肩関節の運動を担う筋ということである。本研究では運動強度を漸増させて筋電図積分値によって筋の活動レベルをみた。その結果は、中強度試行での積分値が高強度と差がないかあるいは凌ぐ値を示した筋の多くは前腕の筋であった(図2)。これを換言すると、上肢帯に近い筋ほど運動強度の違いによる積分値の違いが顕著な傾向にあり、運動強度を高めるためには体幹に近い筋の活動レベルを高めたといえよう。

投球時の主たる関節運動は、肩関節の水平位内転と内旋、肘関節の伸展、橈尺関節の回内、手関節の掌屈9)といわれている。本研究で記録したPMは肩の水平位内転、LDは肩の内旋、TRIは肘伸展、FCRは掌屈をそれぞれ担うので投球動作の主働筋といえる。そして運動強度を高めると、被検者によって筋は異なっていたが、投球動作の主働筋といわれる筋の活動開始を早期化していた(図3)。その場合、早期化することで以下のようなメカニズムを利用していると考えられる。

例えばLDは肩の内旋に関わり、ボールの加速相(上腕骨最大外旋位からボールリリースまで)とフォロースルー相で大きな活動を示す6,11)といわれている。本研究の3相はこの加速相に相当し、

 

 

 

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