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動レベルを高めることに加えて、活動を合目的的に配列するという観点から運動強度を高めるメカニズムを検討しようとした。

 

研究方法

被検者は大学硬式野球部員4名(年齢22.5±0.6yr、身長171.5±2.4cm、体重69.0±2.7kg、野球歴11.8±1.1yr、すべて右利き)で、本研究の目的、方法などの説明を行い、研究に対する協力の同意を得た。

各筋のストレッチングを充分に行ってもらった後、被検者には人工芝上でセットポジションから前方14m、高さ40cmにある目印をめがけてA号軟式野球ボールを投球してもらった。この際、被検者の主観により、はじめはできるだけ低い強度で5球(以下「低強度試行」とする)、徐々に強度を高めてもらい、全力の50%程度の強度で5球(以下「中強度試行」とする)、さらに強度を高めて、全力で5球(以下「高強度試行」とする)を投じてもらった。また、各試行での動作をできるだけ似たものとすることも要請した。

各5球ずつ3試行、計15球について投球時の筋放電を双極誘導の表面筋電図法により記録した。被検筋は、投球腕側の大胸筋(PM)、広背筋(LD)、上腕二頭筋長頭(BB)、上腕三頭筋長頭(TRI)、橈側手根屈筋(FCR)、橈側手根伸筋(ECR)とした。電極はビトロードE-150(日本光電、東京)を用い、筋線維走行方向に沿って筋腹中央に極間距離20mmで貼付し、各電極とアース電極との間の抵抗は20kΩ以下とした。得られた活動電位はマルチテレメータシステムWEB-5000(日本光電、東京)を用い、無線で搬送して時定数O.03で増幅し、サンプリング周波数1000HzでデジタルカセットデータレコーダPC-116(SONY、東京)に取り込んだ。

同時に、投球動作の局面を特定するために、ハイスピードカメラHSV-400(nac、東京)を被検者の右側方に設置し、200fps、露出時間1/2500secで投球動作を撮影した。筋電図との同期には、データレコーダとビデオデッキ両者に同時に電気信号を送った。

投球動作は、ボールになす仕事量を基準に以下の4相に分類し、ビデオ画像から所要時間を求めた。

1相:グラブからボールが出る時点から、テイクバック後に投球方向へのボール速度が再度Oに近づく時点まで

2相:1相終了後から上腕骨が最大外旋位になる時点まで

3相:2相終了後からボールリリース時点まで

4相:3相終了後から右肩の速度が0になる時点まで

筋の活動レベルは、投球動作1から4相区間の筋活動を時間積分した値とした。そして、筋間、被検者間を比較するために、各筋の高強度試行における積分値を100%として相対化した。また、活動開始時点は、全波整流した放電波形をパーソナルコンピュータ上で再現し、電位が上昇しはじめる時点を視認法で定めた。なお、放電相が2つ以上認められた場合にはボールリリースに最も近い放電開始時点を用いた。そして、投球動作の相に対応させて活動開始時点をみるために、1から4相までの時間を100%として各相と活動開始時点を相対化した。

さらに、主観で設定した強度の客観値を調べるために、2名の被検者については投球初速度を後方からレーダーガンPROSPEED?U(Decatur Electronics)により計測した。

 

研究結果

低強度試行と高強度試行において得られた上肢および上肢帯筋の放電波形を図1に示す。いっぽう、レーダーガンで計測された2名の投球初速度を表1に示す。両被検者とも各運動強度を類別できたものの、中強度とした全力の50%程度という設定では投球初速度でみると高強度の50%よりも高く、しかもその値に両被検者で69.2%、81.8%と差が認められた。そこで以下では個人値に注目して得られた値を処理した。

表2に各筋の筋電図積分値を、図2に高強度試行での各筋の値を100%とした際の相対値を示す。

 

 

 

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