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? 調査研究の内容

?-1 物理的油防除資機材の性能調査

 

?-1-1 現有油吸着材の高粘度油に対する吸油性能の調査

 

近年、我が国周辺海域において発生した流出油事故の油の粘度は、油種、海水温度及び風化状況(経過時間)により異なるが、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行規則において、油吸着材に要求される基準の試験油として用いられているB重油の粘度より高いデータが得られている。

この高い粘度の油に対する油吸着材の吸油性能については、法的規制や定量的なデータもなく、防除作業に際しては闇雲に投入しているのが実状である。

このため、本調査研究では高粘度油に対する吸油性能を把握するとともに、実海域における油防除資機材の適正な使用の指針となるマニュアル作成に資すること目的として、油の粘度及び静置時間をそれぞれ変化させて現有油吸着材(型式承認されている油吸着材をいう。)の吸油性能試験を実施し、その評価を行った。

なお、油吸着材の分野では、通常「吸着」という用語は極めて広い概念で使用されているが、基礎的問題を取り扱う物理化学の分野では、吸着は分子、原子またはイオンが固体または液体の表面に保持されることを示し、明確にされている。油吸着材の吸着量では吸着以外の現象に基づく吸油も含まれていることから、今回の調査では概念的に混乱を招く「吸着」という用語を用いず、「吸油1)」という用語を使用することとした。

(1) 供試油吸着材

調査対象とした油吸着材は市場に多く出回っているポリプロピレン製6種類と、カポック、綿、古紙綿及び麻の計10種類で、それぞれ型式承認されているものを選定した。

1) 供試体の厚み及び重量の計測

供試体の試験片の寸法は、型式承認試験基準運輸省船舶局長通達舶査第52号(昭和59年2月1日付け)「排出油防除資材の性能試験基準」(以下「舶査第52号」という。)を参考とし、縦・横をそれぞれ10?に切断した。

厚みの計測は、試験片に700gの荷重をかけ、中央、四隅の5点を計測した平均値をその試験片の厚みとし、試験片30枚の平均値をとった。

試験片の重さは試験片30枚の平均値である。計測結果を表1-1に示す。

なお、これらの計測には次の計器を使用した。

上皿天秤: 島津製作所製 LIBROR EB-3200H 最小表示0.01g
厚 み 計: 三豊通商製デジマチックインジケーター IDU575-113 指示精度20μ

2) 光学顕微鏡等による供試体の繊維等の状況

各供試体の繊維等の状況を、光学顕微鏡(オリンパス製位相差顕微鏡 BH-2)により観察し、走査電子顕微鏡(日本電子社製 JSM-5800LV)を用い繊維の直径を計測した。その結果を写真1-1〜写真1-11に、また、繊維の断面、直径、幅、形態等及び材質、特性を表1-1に示す。

 

 

 

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