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CD4が500以下であれば治療を開始しますが,CD4が500以上でもウイルス量が5,000以上であれば治療をしたほうがいい。5,000以下の場合は経過観察という考え方があります。早期のウイルス量が少ない段階から強力な治療をしてウイルスを押さえ込もうという考え方が強くなっています。

最初に治療薬として使われたのがAZTです。これによってAIDS発症後の患者は生存率が向上する,合併感染症の頻度が減るということが認められました。ただ問題なのは,時間とともに有効性が低下する。 1年たつと効かなくなる例が多い。これはどうしてかというと,ウイルスが耐性を獲得するからです。AIDSウイルスは非常に耐性獲得しやすいのです。構造とか性質が変わって,遺伝子的な突然変異が起こりやすいのです。それが治療のむずかしいところです。それからAIDSウイルスの遺伝子的な構成が変わりますので,ワクチンもむずかしいというのが実情です。

AZTの問題は,耐性ということと,副作用が比較的多いことです。よい面はAIDS痴呆に対しての治療効果があるということ,それから垂直感染,母子感染を防ぐ可能性があるということです。耐性獲得率が高いというのは問題で,それを防ぐためには併用療法が勧められています。それによって耐性獲得を減らすことと,ウイルスに対するより強力な治療効果が期待できるからです。たとえば初回治療としてAZT+3TCとかAZT+ddlといったような併用療法が勧められています。単独であればddIがいいといわれています。最近,最も有効性が高い治療法として用いられてきたのはAZT+3TC十インディナビルという三剤併用です。これによって6カ月後に,HIV-RNA量が90%以上の患者で500copies/ml以下(検出感度以下)に低下したといわれて,CD4のリンパ球の数も24〜44週後には投与前値に比べて115〜227/mm3増加したとい

 

 

 

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