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また最近は便を直接螢光抗体法等で染色する方法も開発されています。

鑑別診断としては,ほかの菌による腸炎や潰瘍性大腸炎やクローン病のような炎症性腸疾患があげられます。

 

6.患者のマネージメント

マネージメントですが,最も大切なことは水分や電解質を十分補うことです。飲める人は経口的に水分や電解質を十分とってもらうことです。お粥など水分を含んだものを経口的にとってもらうこと,それができない人は,重症では輸液が必要になります。

抗菌剤の効果については一定していません。この菌が培養検査で判明してから抗菌剤を使っても,必ずしも症状の持続期間は短縮されませんし,合併症,溶血性尿毒症症候群などを起こす率を下げることはできないといわれています。ただ,早期に使った場合の効果はまだわかっていません。理論的には早期に使えば菌の量が早く減るので合併症は少ないのではないかと考えられますが,まだ臨床的に十分な研究は行われておりません。欧米では抗菌剤の使用に対しては非常に慎重な考えをする医師もあり,菌が死ぬことによってベロトキシンが早く出てしまって,かえって弊害があるのではないかと懸念するわけで,いまのところまだ統一された見解には至っていません。しかし,日本の厚生省の研究班は早期治療を勧めています。早期に大人ではニューキノロン系,子供ではホスマイシンなどを使うということです。早期というのは培養検査で菌がまだ同定されていない段階ということです。私は,受診時の急性腸炎の症状が強く,下痢の回数が多いとか全身的な症状が強く,細菌感染が疑われる例では,経口のニューキノロン系の抗菌薬を処方しています。そしてそれとともに便の培養検査を実施しています。

病原性大腸菌以外の菌による細菌性腸炎については,多くの場合,

 

 

 

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