手術不能の胃癌で,肝移転があって上腹部痛を強く訴え,この写真を撮ってから4週間後に亡くなりました。しかし痛みが消えると,このような明るい表情になったのです。モルヒネの経口投与が始まり,次第に増量して,280mg/日になったときから,痛みが消えたのです。奥さんがふだんの顔つきに戻ったと言いました。痛みが消えたときに,すべての医療従事者にはじめて患者さんが痛みについて同じ言葉を伝えるようになります。それは,「痛くない」という言葉です。痛みが残っているときは,「薬は効いていますか」と質問すると,医師には「ええ,効いています」と言い,看護婦には「少しは効いたかな」と言い,家族には「全然効かない」と言うことが多いのです。こういうように患者さんの言うことに差があるうちは,治療がまだ十分な効果をあげていないので,医療側が痛みへの対応法を強化すべきです。