日本財団 図書館


癌患者の痛みの対応の現状と改善策

 

よく効く治療法があるのに,一方には痛みが除去されずに困っている患者さんが多いのです。これは世界的現象で,世界全体で1日当たり400万人以上もの人々が癌の痛みに苦しんでいると推定されています。

鎮痛薬による治療法はどこでも使えるものですから,すべての医療機関に普及させて,今世紀中には癌患者を痛みからすべて解放しようという計画が1982年からWHOで準備され,1986年から実施に移されました。WHOのリーフレットをご覧ください(図6・次ページ参照)。

これに呼応して日本にもいろいろな動きがありました。

みなさんよくご存知の『がん末期医療に関するケアのマニュアル』が作られました。その中には,癌の告知,痛みのコントロール,痛み以外の症状のコントロール,精神的ケア,家族への支援,患者の生活上のケアなどがまとめられています。もっと細かいことを知りたい人のために56ページに参考文献をあげておきます。

ホスピスと認定されると1日3万6,000円ほど(3,600点)の保険点数を緩和ケア入院費として払うという制度も,この検討会の報告書に沿って決められたのです。また,麻薬である鎮痛薬も使いこなさないと癌患者の痛みのコントロールを十分にはできないのです。麻薬取締法が医療に正しく使われる麻薬の使用を阻害してはいけないので,法律の見直しが行われ,患者さんの便宜を第一に考えた改正が行われました。

厚生省は末期医療に関するケアの講習会も開いています。末期医療に関するケアの検討会には看護婦の代表として南裕子先生が参加していましたが,ディスカッションの中で,看護婦は末期医療を勉強しているが,医師は勉強していないから,医師を再教育するために国が講習会を開催すべきとの意見の一致をみました。実際に開催してみると,集まるのは

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION