?. 痛みへの対応
身体的症状への対応の基本
身体的な症状への対応の総論をまずお話ししましょう。
患者さんは病気を治すために病院を訪れているのです。しかし,どの患者さんも病院にきたとき,「私は癌だから治してほしい」とは言いません。咳が出て止まらない,痰に血が混じっているので心配だ,ごはんを食べると上腹部が痛いというような症状を訴えて病院に来ているのです。つまり,症状を訴え,それをよくしてほしいと要求しているのです。その原因は何かをつきとめ,原因を除去する治療をすることによって症状がなくなることを目標に医療が行われます。それなのに,病理学的な病変にだけ目を奪われ,患者さんの症状の緩和をおろそかにするということがよくおこります。
症状はどんな原因によっておきているのか,どういう方法で対処し,病変が除去されるだけでなく,症状がない状態にするにはどうすればよいか,その目標に到達するには何日ぐらいかかると予測されるのか,その治療でおこりうる副作用は何なのかというように考えなければなりません。患者さんの最初の希望は症状がなくなることなのです。そして,こちらで考えていることを患者さんに説明することも治療の中に含まれているのです(表2)。