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パネルディスカッション

 

保育所の保健活動と地域小児保健

 

司会者 安達雅彦(大阪小児保健所研究会長)

パネラー

小國龍也(枚方市民病院小児科医長)

松谷美代子(東大阪市保健衛生部健康づくり推進室参事)

増井雅子(吹田市立南千里保育園長)

 

提案要旨

保育所と地域の小児保健機関との実際的連携について

 

小國龍也(枚方市民病院小児科医長)

 

枚方市は大阪市と京都市の中間に位置し、人口40万人の住宅都市で、6歳未満の子どもがいる家庭のうちほとんどは、夫婦と子どもからなるいわゆる核家族で、祖父母等の育児の援助者が近所にいる家庭は他の都市部と同様に少ない。我々の病院はこのような地域の中核病院で、小児科スタッフは8名で専門外来の他1次から3次までの救急を行い、また当院に併設されている病児保育室のサポートや肢体不自由児通園施設の回診を担当しさらに自主的子育てグループ(当院の退職看護婦が主催)の支援も行っている。このような日常の臨床の中で最近患者の疾患を治療するためには、ある意味で患児の家庭的社会的背景を考慮しなければならないようなケースが増えてきているように思う。つまり患児のQOLの改善を計るためには医療のみでは困難なケースである。医療においては医師、看護婦、パラメディカルからなる「チーム医療」が強調されている。これは高度専門化していく医療と、複雑かつ多様化していく患者ニーズに答えるには、単独の職種で対応することが困難になってきている現実に対応したものである。

このことは小児保健においてもあてはまる。少子高齢化社会、女性の就労の増加、夜型社会、住宅の高層化、低下した地域の子ども養育能力、 3世代めに突入した核家族、育児文化の伝承の途絶など、ある意味で現代の子育て環境は悪化している。このような中で悪戦苦闘している保護者や子どもたちのニーズに答える事は、各々の職種が単独に対応することでは困難である。保母、保健婦、嘱託医、行政、病院小児科等が各々の専門性を提供し子どもたちのために協力する「チーム保健」ともいえる態勢が必要と考える。子どもの健康な日常を最も把握している保母や嘱託医、専門的情報を提供できる保健婦、栄養士、医師また行政職が参加して子どもにとって最善の方法を考える態勢である。チーム医療とは異なり同一施設内での協力ではないので、効率的運営には調整役が必要で、保健婦や行政にその役割を期待したい。この意味においても母子保健事業の地域自治体への一元化は意義あると考えられる。なおパネル提示においては当院で、いわゆるチーム保健として取り組んだ最近の事例を報告したい。

 

 

 

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