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メンデルスゾーン

「真夏の夜の夢」序曲

 

イギリスの文豪シエクスピアの戯曲「真夏の夜の夢」に興味をもったメンデルスゾーンは、17歳の時1つの序曲を作曲しました。

その後、1843年この戯曲を舞台にのせることを思いたったプロシア王ウイルヘルム4世の依頼をうけ、12曲の附随音楽を作曲しました。

作品の様式は古典的姿を保っていますが、優美で、色彩的、絵画的特長、とりわけ妖精的な世界をえがく音楽の新しいタイプを生み出しており、メンデルスゾーンが“ロマン派”の作曲家といわれるゆえんです。

「序曲」妖精パックを表すかのような弦の無窮動を中心とした見事な音画である。木管楽器による冒頭の幻想的な和音は中間部とコーダで再現され、シンメトリックな形式感を与えるとともに、夢物語としての性格を印象づける。この序曲を始めとして何回か登場するオフィクレイドは、木管楽器的な鍵で音程を変える低音の金管楽器で、現在はテューバで代用される。

 

モーツァルト

ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」

 

〈トルコ風〉という愛称は、メヌエット形式で書かれた終楽章の中間部に意表をついてトルコ風音楽が用いられていることに由来する。この終楽章に限らず、数々の新鮮な創意のこめられた、また第3、第4番を支配するフランス的な流麗さのいっそうの洗練に加え、ドイツ的な形式表現の密度と内容の深さも感じられるスケールの大きな作品である。1775年の5曲の〈ザルツブルク協奏曲〉を締めくくるにふさわしい、青年モーツァルトの最高傑作の一つといえよう。

第1楽章はアレグロ・アベルトと表示されている。アベルトは、英語のオープンに当たるイタリア語で、「開いた」という原義から「率直な」とか「堂々たる」という意味で用いられる楽語。トレモロを伴奏に分散和音で上昇する第1主題の簡潔で力強い表情は、まさにアベルトというにふさわしい。第2主題と結尾主題も輪郭の明瞭さに率直な表情を保っている。第2提示部の入りは独特である。独奏ヴャイオリンがさざなみのように伴奏にのってアダージョの序奏を奏し、第1主題と伴奏に対旋律として新しい主題を導入するのである。短調の新主題にはじまる展開部の密度も高い。第2楽章アダージョは、青年のみずみずしいロマンティシズムをたたえたきわめて美しいカンティレーナ楽章。第3楽章はロンド・テンポ・ディ・メヌエット。これまでと同様にロンドと記されており、接続曲の名残をとどめているが、実質的にはイ短調の中間部をトリオとするメヌエット形式に整理されている。主部を形づくるのはまことに典雅なメヌエット。中間部は、4分の2拍子、イ短調のトルコ風音楽。異国情緒が荒々しく吹きあれたあと、何事もなかったかのようにメヌエット主部が再現する瞬間は印象深い。

 

ドヴォルザーク

交響曲第9番ホ短調「新世界より」

 

1892年、すでに地位も名誉も確立した51歳のドヴォルザークは、ニューヨーク国民音楽学院の初代院長となりました。この3年間の滞米生活のあいだに、彼は名作を続々と生み出しました。「チェロ協奏曲」、弦楽四重奏曲「アメリカ」、そしてこの「新世界より」もそのときの作品です。

「新世界」とは、当時のアメリカ新大陸の別称ですが、この交響曲はアメリカ大陸の風物を描いた、単なる標題音楽と考えない方がよいでしょう。たしかに、この曲のなかにはアメリカの古い民謡や、黒人霊歌の旋律などがつかわれていますが、それは作曲するための素材として用いられたのであり、作曲者自身も「わたしは、こうした旋律の精神を生かして、国民的なものを書こうとしただけなのである」といっています。

作曲は1893年で、翌年ニューヨークで初演されました。

この曲は、どの楽章もとても民族的色彩が強烈ですが、特に第2楽章の「ラルゴ」は有名です。哀愁のこもった美しい主題の旋律は「家路」という題で、独唱、合唱曲にもなっています。この交響曲は望郷の念にかられたドヴォルザークが、新大陸から故国ボヘミア宛に出した、少々アメリカの土のかおりのする「音の手紙」とでも思えばよいでしょう。

第1楽章 アダージョ アレグロモルト

第2楽章 ラルゴ

第3楽章 スケルツォ・モルト・ヴィヴァーチェ

第4楽章 アレグロ・コン・フォコ

 

 

 

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