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第19回作曲賞選者経過と選評

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海老澤 敏

 

日本は、否、全世界が、今、厳しい状況に直面している。経済的な低迷は、文化の、音楽の活動に暗い影を投げかけ、国家や自治体や企業、さらには種々様々な公的、私的機関や組織のメセナ的活動に支障さえ来たしている。メセナ的活動の先駆的な範例でありつづけてきた、当日本交響楽振興財団のごとき財団法人の交響楽活動への助成活動にして然りであるばかりか、当財団の成立形態そのものからして、個々の企業の音楽に対する助成システム以上に、こうした社会的な変動は深刻な事態を現出させているというべきであろう。

しかしながら、こうした危機的な状況下にあっても、財団の運営を支えている法人会員や団体会員の数が減少しないばかりか、若干ながら増加していること、そして財団事務局の真摯な取り組みの姿勢には、深甚な敬意を表明させて頂きたい。いつの日か、ふたたびこのような無償の行為に近い努力が、それにふさわしい形で報われる時がやってくることを、まったく別の形ではあるが、同じように研究面その他で、過去の忘れがたい存在の、忘れられてしまったかに思われる側面に照明を与えるべく、非力ながら相努めている筆者の立場からも願うこと切なるものがある。

若き作曲家たちも、この得がたい、他に類を見ないといってもよい作曲賞が要請しているすぐれた作品の創造をもって、積極的にこうした事態に対する打開策を提示して頂きたいと思う。

さて、第19回の作曲賞の応募はどうであったろうか。今回の応募状況は合計17点であった。これは前回の11点に対してかなり増加して、先立つ3年間の20点に近づいており、応募者数としては、まあまあであろう。その17名中、再応募者は8名と、およそ半数という割合である。

応募者の学歴については、一般高校の卒業者が1名、一般専門学校卒業者も1名、そして一般大学の卒業者は3名で、一般大学の大学院終了者1名、さらに音楽大学(当然芸術大学を含む)中退者、在学者、そして卒業者がそれぞれ1名ずつ、そして音楽大学の大学院在学者が2名、また音楽系大学院修了者が合計6名である。

そして年齢は、22歳から64歳までで、平均年齢は36歳と高くなっているが、これは60歳台がひとり、50歳台がひとり、そして40歳台が3人という応募者の年齢分布からくるもので、20歳台が5名、そして30歳台が7名と、作曲の世界では20歳台後半から30歳台前半がこうした作曲賞へのトライにもっとも適した年齢層であろうか。

シンフォニックな音楽というジャンルの枠の中で、どのような下位分類が可能かは異論もあろう

 

 

 

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