腐敗問題が地方レベルから国家レベルに移行して来ているとも言われている。
2 今後の展望
中国政府は、共産党による前記1のような公務員の統一管理の弊害を除去するため、政治体制改革を過去にも幾度となく試みてきたが、「共産党独裁」という大原則の前に挫折を繰り返してきた。
しかし、同政府及び共産党は、最近の公務員の不正、腐敗問題の深刻化に直面して大きな危機感を抱き、その解決策を探るため、1997年9月に開催された同党の第15回大会において、?@全国人民大会の国務院監督権を強化する法律の制定、?A公務員人事の透明化推進、?B地方首長の直接選挙の拡大等を柱にした政治体制改革の準備を進める方針等を明らかにした(1997年9月11日付け朝日新聞)。具体的には、全人代の国務院監督権は憲法で保障されているものの、政策や予算の執行状況を具体的にチェックし、その結果を行政に反映させるための規定がなく、監督の効果が上がっていなかったが、そうした状況を改善し、党や国務院の幹部らが兼任している全人代代表(国会議員)の専業化を進め、中立的立場で行政を監督させることなどを目指している。
また、国務院各部の部長、副部長、司長、県長等は党により推薦、選抜されてきたが、こうした人事管理は士気の低下や地域主義、汚職の温床となっており、これらを解消するため、公開選抜、公募制等人事の透明化を目的としている。すなわち、共産党と行政の職能を分離することにより全人代や国務院の自主性を高めて行政効率を上げるとともに、汚職等の不正、腐敗の根絶を目指すものである。
また、1994年に設立された国家行政学院は、国務院各部の司長(局長)級以上の者、地方機関の局長級の者、国有企業の管理者等、中・高級公務員の行政能力の向上等を目的とした研修機関であるが、かつては共産党中央党校が、党の理論や思想面の教育と行政能力の付与等の二つの機能を合わせ持っていた。しかし、同党の方針により、1994年以降は、行政能力の向上等実務面の教育に関しては国家行政学院が、政治思想等の理論教育に関しては中央党校というように、機能的に分化させた経緯がある。社会主義市場経済化の更なる推進のためには、政治思想面の教育もさることながら、より高度の行政能力を持った人材育成が不可欠であるとの認識を具体化したものと思われる。新中国の建設以来50年近く続いてきた諸々の体制を急速に変えることには大きな困難を伴う。しかし、経済面で資本主義手法の導入が進展する中で、政経分離の改革だけでは効率が上