Q-12 成人した2人の息子がおり、長男は結婚して2人の子供を設けましたが、次男は重度の障害を持っています。将来、親亡き後のことを考えると、今現在住んでいる家は次男に残してやりたいと考えているのですが、長男にも相応の財産を分けたいと思っていたところ、近々マンションを購入することになったというので、頭金の一部を出してやろうと思っています。金額は700万円程度を考えていますが、贈与税など何か問題があるでしょうか?
A 頭金の一部を出すことに関しては何も問題はありません。問題になるとしたらその出し方です。もし頭金の一部を出して、マンションの登記を100%息子さん名義にしてしまうと、そこには贈与が発生します。不動産の登記は、実質的に取得のために要した資金の負担割合に応じた持ち分で登記されるのが正しい姿です。したがって、700万円の現金を不動産という形に変えて将来の相続に備えることが目的(一般に現金で相続するよりは、不動産で相続するほうが評価は下がりますので、その700万円に相当する持ち分で共有登記しなければなりません。
また、700万円をその時点で息子さんに贈与するつもりであれば、申告をして贈与税を納める必要があります。ただ、このケースでは贈与税を軽減する方法がありますので紹介しておきましょう。
居住用の不動産を取得あるいは建築するための資金(現金に限る)を、父母または祖父母から贈与を受けた場合で、その資金によって住宅を取得(または建築)したときに、一定の要件を満たせば贈与税が軽減されるという特例制度があります。これを「住宅資金贈与の特例」といいますが、一定の要件とは以下の通りです。
? その贈与を受けたとき、日本国内に住所があること。
? その贈与を受けた年分の合計所得金額が、1,200万円以下であること。
? その贈与を受けた人が、それ以前5年以内に自己所有(配偶者名義も含む)の家に住んだことがないこと。
? すでにこの特例を受けたことがないこと。
? 贈与を受けた翌年の3月15日までにその住宅に居住するか、もしくは居住することが確実と見込まれること。
さらに、中古住宅の場合は、築15年(耐火建物は20年)以内のものである必要があり、かつ新築・中古を問わず、床面積が50?以上240?以下でなければならないという家屋に対する制限もあるので注意して下さい。
この特例が適用されるのは、贈与金額で1,000万円までとなります。この金額の範囲内であれば、贈与した金額をその年に一括して贈与したのではなく、5年間に分けて贈与したものとして贈与税が計算されるため、実質的に贈与税の軽減効果があるというものです。
例えば、ただ単に1,000万円を贈与した場合、支払うべき贈与税は283万円。ところがこの特例を使うと、1,000万円を200万円ずつ5年に分けて贈与したものとして計算されるため、1年分の贈与税額14万円×5年分で70万円ですみます。したがって贈与金額が300万円なら、5年に分けて計算する1年分の贈与額は60万円。そこから基礎控除(1年間の贈与金額から差し引ける控除金額)の60万円が差し引けますから、課税対象となる金額は0。無税で贈与できることになります。ご質問のケースでは贈与する金額が700万円ですから、特例を使った場合の税額は40万円となります。ちなみに特例を使わないと、156万円の贈与税を支払わなければなりません。
なお、この特例は特例を受ける旨を申告しなければ受けられませんので注意して下さい。