日本財団 図書館


第1章

高齢化社会における生活環境の変化と肢体不自由者の人生設計

 

1  「生活環境の変化」

 

長寿化の進展

 

平均余命とは、たとえばその年の死亡状況が今後も変化しないとした場合、年齢ごとにあと何年生きられるかを示すものであり、そのなかの0歳児の平均余命を平均寿命といいます。

わが国の平均寿命は、明治、大正期を通じて低い水準にありましたが、昭和期に入ると延びはじめ、昭和25年('50)から27年('52)までの間には男女とも毎年1年以上という大幅な延びをみせました。

厚生省の簡易生命表並びに完全生命表によると、戦前に作成された最後の生命表である第6回生命表(昭和10・11年/'35・'36)では、男は46.92年、女は49.63年であったものが、昭和22年('47)の第8回生命表では男50.06年、女53,96年となり、男女とも50年を越えました。

毎年1年以上の延びをみせた昭和25年('50)には女の平均寿命が60年を越え、翌年26年('51)には男も60年を越えるものとなりました。

以来、平均寿命の延びは多少ゆるやかにはなったものの、昭和34年('59)には男が65年を越え、翌年35年('60)には女が70年を越えました。その後も平均寿命の延びは続けていましたが、昭和55年('80)は男女とも前年を下回りました。しかし平均寿命は年々延び続け、昭和59年('84)には女が80年を越え、昭和61年('86)には男も初めて75年を越えました。

更に平成7年('95)にはわが国の平均寿命は、男76.38年、女82.85年にまで伸長し、戦後50年の間に男が26.32年、女で28.89年も延びたことになります。

平均余命の延びによる長寿化の進展に伴い、高齢者人口も急速に増加してきています。

総務庁統計局の年齢階級別人口と諸指標の年次推移によると、65歳以上の人口では昭和25年('50)の416万人から平成7年('95)の18,260万人へと、この45年間で1,410万人、伸び率で4.4倍にまで増えています。特に75歳以上の後期高齢者人口の増加には著しいものがあり、同じ45年間で107万人から717万人へと実数で610万人、伸び率で実に6.7倍にも増加しています。

さらに、わが国の将来推計人口を0〜14歳、15〜64歳、65歳以上の年齢3区分別人口でみてみると、わが国の高齢化率は平成30年(2018)に25%を超えた後、平成37年(2025)の25.8%を最初のピークとして引き続き上昇し、平成57年(2045)頃には28.4%とピークに達し、その後も27〜8%の水準がしばらく続いた後、平成102年(2090)頃になって25%を下回ると見込まれています。

このようにわが国では、国民の4人に1人が高齢者という状態が1世紀近く続くといわれています。

この長寿の進展を諸外国と比較してみると、わが国の平均寿命は世界一の水準にあり、文字通り世界の最長寿国となっていますが、高齢化を国際比較とてみると次の5つの特徴があるといわれています。

? 現在の65歳以上の人口割合における高齢化の水準は、先進国の中では低い方にある。

? 高齢化の歴史は他の先進国に比べて新しく、昭和40年('65)代に目立ちはじめたが、先進諸国は20世紀の初頭で早い国では19世紀半ばから始まっており、100年の歴史があるのに比べてわが国は僅か30年である。

? 高齢化のスピードが非常に早いのに比べ、他国は長くかかっている。

? 高齢化の将来到達水準が先進国の中で最も高くなる可能性がある。

? 後期高齢者の増加が著しく、平成22年(2010)には75歳以上の後期高齢者が高齢者全体の47%を占めると見込まれている。

また、これらの特徴が起きた理由として、

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION