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及ばないようタンクの支持方法に注意し, タンク空所とガソリンポンプ室にはガソリン漏洩の時, 炭酸ガスを吹き込むようにした。また, 隣接船槍が火災の時隔壁の温度を下げるため撒水する装置と火災警報装置を設けた。ヘリコプターを端艇甲板に暴露のまま輸送するので, 本船煙突よりの火の粉防止装置を設けた。プロペラの材質は第2次航海まで鋳鋼であって少し材質が不均一なため翼折損が生じ易いと考えられたので, 捕鯨船で良好な実績のある13クロム鋼に変更した。そのため第6次航海までプロペラ折損事故は生じなかった。舵頭材は10度35分も捩れたので大きい径のものと新替した。左舷推進軸は抜き出して曲り検査の結果, プロペラ嵌合部で0.33mm曲っていたので新替した。氷海航行により湾曲したビルジキールは第2次工事の時取り付けたものに復旧した。

第3次航海では昭和34年1月14日より2月3日までの間にS58型2機による58便で越冬隊員14名と資材57tを昭和基地へ空輸することに成功した。回転翼を取り外した2機のS58ヘリコプターの大きな機体を端艇甲板に係止したまま熱帯海域と暴風圏を通過して無事に南極まで輸送出来た上にタンク内の大量のガソリンが海水に浮いた状態で長途の航海に堪えて昭和基地への空輸を成功させたことは,「宗谷」乗組員の慎重で適切な運用の成果であった。

 

4. 第4次改造. 修理工事

昭和34年夏の第4次工事では, 第3次航海の貴重な経験を基にして空輸作戦が一層迅速に行なわれるよう諸設備を改善した。まず航海船橋甲板の海図室後部に航空司令室を設け, ここに受信機と管制盤をおいて対航空送信が出来るようにした。またインターホーン1台を設け, 氷上ヘリポート, ヘリコプター甲板,気象観測室間の連絡を容易にした。3次航海では, S58係止用架台を油圧ジャッキで持ち上げ移動用車輪を取り付けた後,後部マストに設けたチェンブロックの下まで機体を移動し機体を吊り上げておいて主車輪を取付けるので1機の作業に40分かかり気温の低い南極海では手間のかかる危険な作業であった。これを改善するため後部マスト前面にS58吊り上げ装置として起倒式枠型クレーンを取付けることにしたので作業時間が短くなり作業も容易確実となった。さらに航空機標識灯として全部マストのポスト上部に光達距離40kmの点滅信号灯を新設して, S58の帰船目標とした。修理工事としては, 第3次航海帰国途中シンガポールで手動揚艇機の一部が欠損し, 11m型作業艇兼救命艇が海面に落下し破壊したので, それ迄船尾の係船機を動力としていた方式を止め, 端艇甲板上に18kwの専用電動揚

 

 

 

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