うということで、お二人の先生をお呼びしたということになります。
第3番目のセッションが、やや異質なものとお考えになった方もおられると思いますけれども、もっとも国際化して一番ディレギュレーションが進んでいる金融の分野でどんな問題が起きているのか、ということ、ある意味では最先端の研究でありますアジアの歴史的統計ということを二つ組み合わせまして、カレントな問題ということで、第3セッションを組んだわけです。
本日ご報告をお聞きしておりまして、非常に各先生方のご努力によりまして、いずれのトピックスも成功を収めたと考えております。やや蛇足ながら私なりに本日の成果をまとめてみますと、次のように言えるかと思います。
まず、アジアの問題につきましては、シャリ先生が伝統的な所得分布の問題から出発いたしまして、貧困の問題も議論していただきました。シャリ先生と私の関係につきましては、先程ちょっと引用されたわけでありますけれども、アジアの所得分布の研究を始めましたのは大体1970年であります。そのとき先程尾高先生が引用されたサイモン・クズネッツのアドバイスによって初めて、アジアの所得分配の共同研究を始めたわけであります。その重要メンバーがきょう来ていらっしゃるシャリ先生でありまして、シャリ先生はなおご活躍で非常に嬉しく思っております。
シャリ先生がご指摘になりましたように、その後アジアの所得分布統計は非常に発達しております。もちろんシャリ先生が言われましたように、幾つかの問題はございますけれども、かなり所得分配の統計はわかるようになった。という意味では、非常に成功しておりまして、今後さらに研究が進められればと思っております。
ただ、一つだけ敢えて問題を申しますと、従来私どもが考えておりましたアジアの地域では、経済発展が進みますと、概ね貧困の問題は解消し、所得分配もそれほど少なくとも悪くはならない。どちらかというと、いい方向へ進む。というのが、アジアの経験であったかと思います。
ところが、ここ1990年になりますと、所得分配の傾向はむしろ悪化の傾向に進んでいます。これはいわゆる経済のディレギュレーションと非常に関係しているわけでありますけれども、そのような意味で所得分配の問題は古くて新しい問題であろうというふうに考えております。一方、この所得分配のデータ面から見ますと、一つの大きな欠点は各国でタイムシリーズでは得られない。何年かおきにしかデータが得られないということでありまして、非常に同じ時点で比較する、あるいは多数国で比較するという場合に非常に困難な問題が起きる。そこで開発されましたのが、最近のHDI(人間開発指標:Human Development Index)というものであります。このお話はアフリカ先生から非常に詳しくお話いただいた、ということであります。特にアフリカ先生のご指摘で、HDIをさらに項目を増やして進めるべきであるというご提案は、可能な限り今後努力していくべき方向であろうかと思っております。
さらに、環境問題につきましては、先程篠原先生から言われましたように、GNPをまずNDPに直すという操作と関連があります。国民経済計算では減価償却を差し引く=GNPをNDPに直