今回DFNAll家系に同定された変異は、ミオシンV?UAのcoiled‐coil領域に位置している5)。Coiled-coil領域はミオシンV?UAの二量体形成部位であることが報告されており2),変異対立遺伝子の遺伝子産物が正常蛋白の機能を障害し,dominant negative効果により常染色体優性遺伝形式の表現型となった可能性が考えられる。同じミオシンV?UA遺伝子変異による常染色体劣性遺伝形式のUsher症候群IBやDFNB2の難聴に比して,DFNAll家系における難聴が軽度である点は,この推論を支持している6)。Usher症候群IBやDFNB2においてすでに20以上のミオシンV?UA遺伝子変異が同定されているが,coiled-coil領域にはまだ同定されていない1)2),7-10)。本研究により,常染色体優性遺伝形式の非症候群性難聴の原因遺伝子検索として,ミオシンV?UA遺伝子のcoiled-coil領域をスクリーニングすることが有用であり、地域集団における遺伝性感音難聴を対象とした検討が期待される。
謝辞 本研究は日本財団補助事業による補助を受けており、ここに深く謝意を表します。