今 後 の 研 究 課 題
来年度の調査では、「国際競争下の拠点港湾に関する研究調査」の研究成果をもとに、国内および国外の経済的な環境が変化した場合に、港湾とその背後圏の物流システムに及ぶ経済的な影響について、制度的・計量的な分析と調査を行なう。特に、外航定期船市場の競争状態と船社間の提携の変化、船社や貨物フォワーダーの経営戦略の変化、および港湾整備・運営政策の変化が、荷主企業の物流ニーズに与える影響や、阪神地区の港湾を中心とした物流サービスの効率化に与える影響について検証する。また、地域の産業ビジョンにもとづいた、港湾とその背後圏を基点とした産業活性化の施策についても検討を行なう。
来年度の調査の内容は、大きく2つに分かれている。
1. 現状分析
近年、アジア太平洋地域にみられる定期船市場の構造変化が国際物流システムに与えた影響について、制度的・計量的な分析を行なう。また、阪神地区の拠点港湾を具体例として、港湾を結節点とした生産地から消費地までをつなぐ荷主の物流ロジスティクス戦略についての現状分析、および物流システムの効率化が地域経済に与える経済的な影響について分析を行なう。
2. モデル分析
モデル分析では、拠点港湾のネットワークの整備・運営が地域経済に与える影響を数量的に把握する。ここでは、政策担当者。船社・荷主の3者によるゲーム的な状況をモデル化し、船社の航路選択をわが国の拠点港湾ネットワーク整備に反映させ、物流システム効率化の可能性について検証する。また、現状分析の検討内容にそって、拠点港湾をとりまく外生的な変化、すなわち海運市場の競争状態、コンテナ・ターミナル整備、港湾諸料金、船型などの変化を考慮した港湾整備・運営方策についても数量的な分析を行なう予定である。
近年、経済の国際化や東南アジアの経済発展により、わが国の企業による海外直接投資がアジアに集中している。企業活動のグローバル化とともに、国際的に調達・製造・販売を一貫して行なうロジスティクスの考え方が重要性を増し、国際的な物流サービスに対する荷主のニーズは質的に大きく変化しつつある。しかし、わが国の拠点港湾を中心とする物流サービスは、荷主のロジスティクスの考え方に応えていない。いまだに国際標準の物流サービスが実現できていないために、アジアの拠点港湾との競争に大きく遅れをとっているのが現状である。今後、神戸港・大阪港を抱える関西経済圏においては、国際競争を念頭においた長期的な産業ビジョンにもとづいて国際標準の物流サービスを整備し、アジア域内物流の拠点港湾を育成する必要がある。
今後の調査では、阪神地区の荷主の物流ニーズに焦点をあわせた拠点港湾の物流システムの効率化や、拠点港湾の整備と運営のあり方を検討するとともに、物流システムの効率化による地域経済活性化の方策について検討する。