は じ め に
本報告書は、(財)日本財団の平成8年度補助事業として実施した「国際競争下の拠点港湾に関する研究調査」の結果をとりまとめたものである。
今日、わが国の経済社会を支える物流に対するニーズは極めて高度化している。生産・流通のプロセスに輸送・在庫管理・保管・荷役・受注分析などを総合した効率的な物流をめざしロジスティクス戦略を構築することが、企業生き残りの必要条件にさえなっている。
ところが、これまでのわが国の物流政策において高度化する荷主ニーズの変化への対応が遅れた結果、わが国の港湾は物流拠点をめぐる国際競争の地位を低下させ、今後は背後圏に及ぼすマクロ経済効果にも陰りを見せると予想される。早急に国際競争を視野にいれた物流システムについての長期ビジョンを確立するとともに、今後の地方分権化の流れのなかで、港湾管理者である地方自治体の経営戦略とも合わせて検討する必要がある。
本調査の目的は、このような問題意識のもとで、荷主のロジスティクス戦略構築の進捗状況と国際物流業の対応を十分に踏まえながら、阪神地区の主要な港湾を具体例にして、東南アジアや極東の主要港湾との国際競争を念頭においた効率的な運営のあり方を検討し、物流拠点を抱えた港湾都市の戦略的な港湾政策を提案することである。
調査を進めるにあたっては、宮下國生神戸大学経営学部教授を委員長とする「国際競争下の拠点港湾に関する研究調査委員会」の各位よりご意見、ご指導を賜るとともに、関係業界の方々から多大なご協力をいただいた。ここに厚く感謝の意を表する次第である。
平成10年3月
財団法人 関西経済研究センター
理事長 新宮康男