張作驥
チャン・ツォチー
監督
1961年台湾生まれ。87年に文化大学映画演劇科を卒業。助監督として、虞戡平監督『海峡両岸』(87)『二人のペンキ屋』(89)、イム・ホー、ツイ・ハーク監督『棋王』(88)、侯隆賢監督『非情城市』(88)などにつく。脚本『暗夜槍聲』が助成金を獲得し92年撮影を行うが、製作会社により内容を改竄され、監督デビュー作『ミッドナイト・リベンジ』(92)は不本意な公開となった。テレビドラマを手がけつつ企画を練る。94年再び助成金を得て、第2作『チュンと家族』(95)を製作。トロント、マンハイム、ナントなど海外の映画祭で紹介された。
解説
『非情城市』で助監督をつとめ、『ミッドナイト・リベンジ』で監督デビューした張作驥の長編代2作。サイコサスペンス風の前作とうってかわって、今回は少年と家族の生活をドキュメンタリータッチで描く。政府からの補助金400万元を加えて制作費800万元の低予算で、製作に1年、さらに公開まで1年をかけた。道教の儀礼で、神の露払いをつとめ、トランス状態にはいって自らの身体を傷つける、八家将を扱った珍しい作品でもある。役者のほとんどは映画出演の経験がなく、撮影にあたっては、家族の雰囲気を出すために、クランクイン前に1ヵ月にわたり共同生活をさせた。撮影時にもアドリブを許容し、家族の自然な会話を重視したという。母親役を演じた邱秀敏は、作中と同じ民間の演芸団の芸人で、本作で金馬奬助演女優賞を獲得した。不良少年を主人公にした作品ながら、アチュンの家族を思いやる心や、祖父や弟との交情を描き、ひと味違った青春映画に仕上がっている。
物語
台湾の宗教儀礼、八家将を修業する少年・アチュンは、芸人の母とチャルメラ吹きの祖父、知的障害の弟といっしょに暮らしている。アチュンは母方の家を絶やさないように祖父の姓をつがされたが、そのために情けない語呂あわせで仲間からからかわれ、いささかむかついている。粗暴で口うるさい父親は別居中で、彼から生活費を受け取ってくるのもアチュンの仕事だ。養女の姉は、父に犯され、いまでは家を出てアチュンの兄貴分と同棲している。ある日、血の気の多いアチュンたち八家将のグループはやくざといさかいをおこし、そのために兄貴分が襲撃されて死んでしまう。そんな矢先、自分の不道徳を棚に上げ、説教をたれはじめた父に、ついにアチュンはやり場のない怒りを爆発させるのだった。
(加藤)
スタッフ
製作 : 林添榮 リン・ティェンロン
監督・脚本 : 張作驥 チャン・ツォチー
撮影 : 張展 チャン・チャン
照明 : 丁海徳
美術 : 陳懐恩 チェン・ホアィエン
音楽 : 張藝 チャン・イ
編集 : 廖慶松 リャオ・チンソン
録音 : 杜篤之 ドゥ・ドゥージー
キャスト
チュン : 劉勝忠 リウ・シェンチュン
チュンの母 : 邱秀敏 チウ・シウミン
チュンの祖父 : 蘆嬰
チュンの父 : 蔡皆得
チュンの姉 : 張巧明
チュンの弟 : 何煌基
親分 : 陳令蒼
陳銘 : 陳銘
96アジア太平洋映画祭審査委員特別賞
96プサン国際映画祭審査員特別賞
96テサロニキ国際映画祭最優秀監督賞
96珠海映画祭最優秀撮影賞 審査員大賞
96金馬奬最優秀助演女優賞 (邱秀敏 チウ・シウミン)