海を見つめる日(P50)参照
王童
ワン・トン
監督
解説
王童による“台湾三部作”の第3作目。ここでは、1920年代初めの台湾の金鉱町を舞台に、日本の統治下における坑夫や娼婦など貧しい庶民の生きる姿をドラマ化している。第2次大戦下に日本人として生きねばならなかった台湾農民の姿をアイロニカルに描いた『村と爆弾』(87)、第2次大戦後に国民党軍の兵士として台湾に渡ってきた大陸農民の生きる姿を悲喜劇として描いた『バナナ・パラダイス』(89)、そしてこの大正時代の台湾を描いた『無言の丘』(92)によって、台湾の20世紀、それも庶民による台湾近代史ともいうべき歴史が描かれることになった。ただ『村と爆弾』と『バナナ・パラダイス』の脚本は王小棣と宋紘のふたりによるが、この『無言の丘』の脚本は呉念真である。そのためか、この第3作目は少し雰囲気が異なるように見える。事実、舞台となった金鉱町は呉念真の生まれ故郷であり、セットによる炭坑や町の雰囲気作りには呉念真の知識とアイディアが大きく寄与したといわれる。
物語
日本統治下の1920年第初めの台湾。貧しい小作農のアチューとアウェイの兄弟は、地主の厳しい搾取から逃れ、北部の日本人経営の金鉱で坑夫として働くことになり、未亡人のアジョウの家に下宿する。気丈なアジョウは子供たちを養うため売春をしているが、そんな彼女にアチューはひかれ、やがて結婚。一方、アウェイは町の売春宿で下働きする沖縄出身の富美子に惚れるが、気の弱い彼は口にできない。その売春宿で娼婦を買うため、金鉱から尻の穴に金をつめて持ち出す坑夫たち。売春宿で働く日本人との混血少年が富美子と結婚したいためにそのことを会社に密告するが、少年は約束を守らなかった日本人経営者を殺して処刑される。会社と坑夫たちの関係が悪化する中、炭鉱事故でアチューが死に、アジョウは子供たちと町を去っていく。そして、残されたアウェイは初めて富美子と関係を結ぶ。(村山)
スタッフ
製作 : 徐立功 シュー・リーコン
監督 : 王童 ワン・トン
脚本 : 呉念眞 ウー・ニェンチェン
撮影 : 楊渭漢 ヤン・ウェイハン
照明 : 王盛 ワン・シェン
美術 : 李富雄、李寶琳
音楽 : 陳昇 ボブ・チェン
李正帆
編集 : 陳勝昌
キャスト
アチュー : 澎恰恰 パン・チァチァ
アジョウ : 楊貴媚 ヤン・クイメイ
黄品源 ホアン・ピンユアン
陳仙梅
任長彬 レン・チャンピン
分英 ウェン・イン
第29回金馬奬最優秀作品賞 最優秀監督賞 (王童)
最優秀脚本賞 (呉念眞) 最優秀美術賞 (李富雄)