李道明
リー・ダウミン
監督
1953年生まれ。学生時代から映画批評活動を展開。78年渡米し、フィラデルフィアのテンプル大学で映画テレビ芸術修士号を取得。帰国後、テレビやドキュメンタリーの監督として活躍し、特にドキュメンタリー作品で高い評価を受けている。代表作に『先生離家時』(84)、『殺戮戦場的辺縁』(86)、『吹鼓吹』(88)、『望郷』(97)などがある。
解説
王笨湖の小説から2本の作品を選び、新人監督が競作で映画化した。本来は3作からなるオムニバスの予定であったが、残る1本となる予定だった『落山風』(黄玉珊監督)が、韓国のカン・スヨン主演で独立した作品になったために、この2作のカップリングとなった。同じ原作者の作品だが、かたやホラータッチ、かたや郷土映画と、ややバランスに欠けたきらいがあるが、第25回金馬奬特別賞を受賞した。『墓あらし』の何平監督は本作がデビュー作で、以前はコマーシャルフィルムなどを手がけていた。『双旗鎮刀客』で知られる大陸の何平監督とは別人。30分という短い時間を、テンポの早い演出で盛り上げている。陸小芬が肌もあらわに汚れ役を演じているのが珍しい。『笛吹きの恋』の李道明監督はドキュメンタリー出身で、『殺戮戦場的辺縁』(86)でアジア太平洋映画祭最優秀ドキュメンタリー賞を受賞している。焼き畑と機械化が同居する過渡期の台湾農村の風景を背景に、田舎の人々の素朴な心情を描いた手堅い秀作。
物語
『墓あらし』
社会のはみ出し者の3人の男とひとりの女。彼らは墓荒らしをなりわいとしている。ある日、金持ちの家の改葬を知り、いつものように仕事にかかる。女は幽霊に化け近づく人を追い払い、男たちが棺を開けて死体から金品を奪う。仕事を終えて引き上げる途中、脅して追い払ったはずの牛泥棒に逆襲され仲間のひとりが命を落とす。残った連中はほうほうの体で車に乗り込み逃げ出すが、そこへ対向車のヘッドライトが突っ込んでくる。
『笛吹きの恋』
チャルメラ吹きの登教は生まれつきの発育不良で、30歳も近いのに子どものような身長で、悪童たちからもからかわれている。師匠には結婚を勧められるが、彼の心中には人目ぼれした阿桃しかいなかった。阿桃の家は貧しく、借金を返すため持参金目当てに阿桃を嫁にやることになった。登教の家族は本人に内緒で、弟を登教の代役に立て、縁談を進める。嫁入りの当日、新郎が登教であることを知り、騙されたことをさとって阿桃は失望する。登教を拒みづづけた阿桃だが、やがて登教の素朴な心と純愛に触れ、ついに心を開く。
(加藤)
スタッフ
製作 : 徐國良 シュー・クオリャン
監督 : 『墓あらし』何平 ホー・ピン
『笛吹きの恋』李道明 リー・ダウミン
脚本 : 安億心、張大春
原作 : 汪笨湖
撮影 : 廖元榕 リャオ・ペンロン
楊渭漢 ヤン・ウェイハン
照明 : 夏釣華、王盛 ワン・シェン
美術 : 李富雄
音楽 : 陳揚 チェン・ヤン
編集 : 汪晋臣
録音 : 杜篤之 ドゥ・ドゥージー
キャスト
『墓あらし』
陸小芬 ルー・シャオフェン
任達華 サイモン・ヤム
『笛吹きの恋』
林秀玲 リン・シウリン
胡鳳生 フー・フォンシャン