解説
郷土作家・黄春明が、自作の小説を本人みずから脚色、王童が監督した。本作は、娼婦たちの姿をはじめて正面から描いた作品として台湾で大ヒットし、王童監督の巨匠としての地位を確立させた。主演の陸小芬は、主演に当たって実際に娼婦たちへの取材を行い、それを活かした会心の演技を見せ、第二十回金馬奬主演女優賞を受賞した。一般に公開されたのは北京語版だったが、同時に役者自身の吹き替えによる台湾語版も作られ、台湾中南部で上映が行われたという。
英語タイトルの“A Flower in the Rainy Night”は台湾語の古い流行歌「雨夜花」のことで、本作の中でも娼婦たちの歌う哀愁に満ちたメロディが印象的である。
物語
貧しい農家に育った白梅は、14歳で海辺の娼館に売られ、身を犠牲にして働き14年にわたって実家に仕送りをつづけていた。自分を売った養父の一周忌で、白梅は列車で故郷へと向かう。しかし、家計をささえてきた彼女に対する兄弟や親戚たちの眼は冷たかった。白梅は、子どもを産むことと娼婦から足を洗うことを決心する。魚を持って娼館を訪れた純朴そうな若い漁師を相手に選び、妊娠を確信した彼女は、晴れ晴れとした顔でひとり海辺の町を後にする。故郷に還って実家の農家を手伝い、汗水流して働くうちに村人ともうちとけてゆく。やがて子どもが生れる。海岸沿いを走る列車の中、白梅は子どもに、父親が何も知らずに働く海を見せるのだった。
(加藤)