オオアオイトトンボであった。これらの優占種で全種の総のべ個体数の75%以上を占めた。このうち、シオカラトンボ、オオシオカラトンボ、オオアオイトトンボはため池内でも幼虫が多数確認された種であるのに対して、アキアカネ、マユタテアカネの2種はため池内で一度も幼虫が確認されなかった種であった。
2. 種数、個体数、種多様度の季節的変化
種数については、7月中旬に大ピークと10月上旬に小ピークを示した。個体数については、11月上旬まで比較的安定した推移を示した後、急激に減少した。種多様度(1-λ)については、2山型を示し、初夏と秋に高まり、8月下旬に低くなった(図7)。
3. 優占5種の季節消長
シオカラトンボは調査開始日から9月下旬まで目撃された。アキアカネは7月下旬から8月中旬まで目撃された後、しばらく見られず、再び9月中旬から11月中旬まで見られた。オオシオカラトンボは調査開始日から9月下旬まで目撃された。マユタテアカネは8月上旬から8月中旬まで目撃された後、しばらく見られず、再び、9月上旬から11月中旬まで見られた。オオアオイトトンボは6月上旬から7月下旬まで見られた後、しばらく見られず、再び9月中旬から11月中旬まで見られた(図8)。
4. トンボ類各種のため池の利用様式
新しく造成したため池との関連をみると、シオカラトンボ属3種は、ため池内で幼虫も確認され、成虫も本調査においてため池周辺で多数見られたことから、水辺で生活史全体を送ると考えられる。一方、ホソミイトトンボ、ホソミオツネントンボ、オオアオイトトンボ、オニヤンマなどは、幼虫はため池内で多数見られたのに対して、成虫は羽化時期と産卵時期以外はほとんど見られなかった。これらの種はため池を繁殖場所として利用するが、成熟期などは、他の場所で過ごすと考えられる。また、アキアカネ、マユタテアカネなどを含むアカネ属の種は一年中水のある環境では生息できない(上田,1996)と報告されているが、本調査でも成虫が多数ため池周辺で見られ、ため池内への産卵も確認されたにもかかわらず、幼虫はため池造成初期以後はまったく確認されなかった。