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第2章 大阪府豊能町の山間部におけるトンボ類群集の多様性と季節推移

 

近年、水辺環境の悪化により、トンボ類は減少しており、ベッコウトンボやヒヌマイトトンボのように、レッドデータブック(環境庁,1991)に絶滅危惧程として掲載された種もある。一方、中村市のトンボ公園(杉村ら,1991)をはじめ、市街地に造った「トンボ池」でも多くのトンボ類が発生することが知られるなど(井上,1995など)、「ビオトープ」造りが各地でさかんになりつつある。本研究においても、豊能町の山間部に休耕田を利用したため池において、これまでに12種が確認されている(第1章参照)。しかし、これまでの調査では、調査対象はため池内の幼虫に限定されていた。そこで、調査地におけるトンボ類成虫の多様性と季節消長を明らかにすることを目的に、ルートセンサス調査を行った。

 

調査地と調査方法

 

調査ルートは、大阪府豊能町の山間部に造成したため池を含む棚田を周回する全長約330mのものを設定した。調査は1997年6月から1997年11月まで、週1回、計17回行った。各回の調査では、ルート上を一定のベースで歩きながら、目撃したトンボ類の種と個体数を記録した。また、目視で判断できない程は捕虫網で捕獲し、同定したのち、放逐した。また、各種少なくとも1個体は研究室に持ち帰り、石田ら(1988)に従って確認を行った。

 

結果と考察

 

1. 確認されたトンボ類の種数およびのべ個体数

本調査において7科21種のべ806個体のトンボ類の成虫が確認されたが、全個体数の80%以上はトンボ科であった(表3,図6)。優占5種は、多い順にシオカラトンボO.albistyrum、アキアカネ、マユタテアカネ、オオシオカラトンボ O.triangulare

 

 

 

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