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は じ め に

 

わが国の自然の多くは、過去の人間とのかかわりの中で、その多様な気候風土と独特の農業的土地利用によって、多様かつ複雑な生物相を育んできた。中でも、ため池、水路、水田などからなる伝統的な稲作水系は、水生半翅類、水生甲虫類、トンボ類など多種多様な水生昆虫類の温床であった。

しかし、現在ではこうした稲作水系はコンクリート護岸や圃場基盤整備、あるいは生活排水や農薬などによる水質の汚濁・汚染などで絶滅に瀕する生物も多い。また、中山間地域では、手間のかかる谷津田や棚田自体が放棄されている。そのため、かつての稲作水系に豊富に見られた水生昆虫の中にも、タガメやゲンゴロウ、ハッチョウトンボなどのように、全国的に急激に減少してしまったものもいる。

本研究では、今後の水生昆虫のためのビオトープづくりの基礎データを集積することを目的として、中山間地域の休耕田に浅い池の実験区を造成し、水生昆虫の種数や個体数などの推移について調査を行った。また、水生半翅類については生活史と飛翔の関係、トンボ類については成虫のルートセンサス調査なども並行しておこなった。

なお、本事業は平成9年度日本財団補助事業として行われたものである。この場をかりて厚く御礼申し上げる。

 

 

 

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