第1章 調査研究の概要
1. 調査研究の背景と目的
離島航路は、離島や陸上公共交通機関断絶地区における住民及び生活必需物資の輸送等にとって、必要不可欠な交通手段となっているが、その経営基盤は脆弱な航路が多い。
近畿運輸局管内においても、離島航路整備法による離島航路の指定を受けた一般旅客定期航路をはじめ、複数の離島航路が開設されているが、利用人口の減少などから厳しい収支状況が続いている。
一方、近年の厳しい財政状況から、国等の補助金については可能な限り抑制することが求められており、離島航路整備費補助についても、事業者の経営改善努力を促すよう、平成6年度及び8年度に制度改正がなされている。
本調査は、このような状況に鑑み、近畿運輸局管内の「舞鶴航路」と「沖島航路」について、航路の利用促進及び経営効率化方策並びに航路のあり方や支援方策等について調査・検討を行うものである。
2. 調査対象航路
1)舞鶴航路(西舞鶴〜大丹生〜東舞鶴)
舞鶴湾沿岸の大丹生、白杉地区は陸上公共交通機関断絶地域であるため、舞鶴湾沿岸の西舞鶴〜大丹生〜東舞鶴に一般旅客定期航路が開設されており、通勤・通学等沿線住民の生活の足として極めて大きな役割を果たしている。当航路は、昭和51年度以降毎年度、離島航路整備法の国庫補助航路の指定を受け、国、京都府、舞鶴市より、欠損金の全額について補助を受けているところである。特に、近年は航路筋人口の減少、周辺道路の整備等により利用旅客が減少し、航路損益は悪化の一途をたどっている。
さらに、同航路沿線の浦入地区における関西電力の発電所の建設工事の開始に伴い、新たな道路整備が進められていることから、今後さらに同航路の利用人員の減少が予想される。
2)沖島航路(琵琶湖の沖島〜長命寺)
琵琶湖内の沖島においては、島内の住民の通勤・通学等の足として旅客定期航路が複数開設されているが、一般旅客定期航路の運航者はいずれも個人で経営基盤は非常に弱く、利用人口がほぼ島内住民に限定されていることから、航路の採算性も非常に低い。一方、特定旅客定期航路は近江八幡市による主として中学生の通学のためのスクールボートであり、一般の旅客が利用することは現状では不可能である。
島内住民の唯一の公共交通手段である同航路の維持・活性化は、沖島住民の生活基盤を確保するためにぜひとも必要と考えられる。