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街地を粗製乱造することだけは避ける必要があろう。

 

(4)都市防災の自発化と市民主体の形成

防災は自治の問題と言われるように「市民による市民のための防災」という視点が必要とされる。帝都復興計画が挫折した背景には、市民の大きな反対があった。その反対は、市民の意向を無視して強行されたことにもよるが、市民自身の問題として受け止められなかったことにもよる。市民が都市防災化の必要性をまず認識し、さらに市民が自覚的自発的に取り組もうとしなければ、その実が上がらないということである。

都市の防災化は、都市基盤の整備や街区環境の整備を基礎に、建築形態などについてのルールの遵守を媒介として、達成される。そのために、災害に対して運命共同体的関係にある住民の協調や自律が求められる。住民自治が不可欠だといってもよい。全体の安全のために我慢すべきところは我慢すること、また利害が対立した場合においてはそれを調整すること、さらには安全のために互いに連帯することが求められるのである。それゆえ、市民の統治力を高めることなくして都市防災は成り立たない、といえる。

市民が積極的に防災計画の立案過程に参画するという市民参加の視点も忘れてはならない。参加することにより自覚が芽生え、責任の共有もはかられるからである。先に述べたサンタクルズ市の復興計画で「市民創意の計画への反映」が強調されているが、できるだけ計画は白地で提案して市民の意見を取り入れていこうとする姿勢は、わが国でも学ぶべきだと思う。わが国でも、まちづくり協議会などを通じて市民参加を推進する機運にあるが、都市防災においても防災まちづくり運動として展開することが推奨される。幸い東京都では、防災まちづくりの実践が各地域で展開されているが、そこにおける市民参加の内実を高めるとともに、その実践の裾野を全域に広げることを期待したい。

 

 

 

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