小石川陸軍東京工廠本館前の馬車廻し植え込みでは、アカマツ、モッコク等は全枝葉変色枯死したが、マテバシイは葉の一部が変色したのみであった。
上木が黒焦げ、枯死した場所でも、下木である高さlmのヤツデは、変色程度にとどまっていた。
(3)恢復力の例
9月23日頃からの調査では、ツバキ、サザンカ、カキは萌芽はまれ、モッコク、ドウダンツツジは発芽なし。Monilia類似菌の寄生をうけたものは、枯死多し。ただし、イチョウ、アオギリは、片面より発芽していた。
(4)防火効果の事例
建物が村木により類焼を免れた事例力40例報告されているが、内4例を紹介する。
イ.麹町区上二番町 三井家別邸
当家の家屋は瓦葺平屋で、周囲を屋根より高いシラカンが取り囲んでいた。
周囲の炎上家屋より最も近いところで10.8mであった。このシラカシが炎を遮り当家は無事。四周からの類焼を免れることが出来た。
ロ.下谷区下根岸町 下山邸
当家の家屋は瓦葺平屋で、炎上した隣家との間は、7.2m隔て高さ1間ほどの板塀で仕切られていた。その内側は屋根より高いスダジイが並び、更にもう一列やや低い樹木が並んでいた。炎から最も近い板塀は焼失、それに続くスダジイは、この板塀炎上の影響も加味されたものか、炎側は大被害を受けた。
しかし、内側に被害はなく、更に内部の樹木は全く無傷であったため、これら樹木が炎を遮り、当家は類焼を免れることが出来た。
ハ.本所区中の郷瓦町 「サッポロビール株式会社」の小神社
当神社は、周囲をスダジイの林で三重に囲まれていた。最も外部のスダジイは全部黒焦げ(炎に直接あたった結果)、中間のスダジイは変色して全部落葉(炎の熱が内部まで浸透)、内部のスダジイは僅かに変色した葉を残すのみとなった。しかし、これらの樹木の犠牲のお蔭で中の小社は無事であった。
ニ.本所区小梅 大川屋料理店
スダジイの並木と多数の樹木(幹径8.3cm、高さ6.3mのサワラの二列並木と規則正しく配置された高さ3.3mのサンゴジュ)、これに加うるに入力消防により、裏手の木造ニ階家は無事であった。
(5)防火効果の高い植栽の例
イ. 植え込み、樹林、並木でも下木が植栽されているもの防火力大。特に下木がヤツデ、アオキのとき効果あり。
ロ. 植え込みえは並木がその中腹以下を塀で保護されているとき防火力大。