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た。これは海上でソヴィエト海軍の急所をつく戦略を説明したものであるが、国防総省内、ばかりでなく、米国空軍ほかその他関係部署からも批判された。しかし、陸海空軍を通じて、米国軍がこのような書類を作成し、己の存在を正当化しようとしたのは初めての事であった。

米国海軍は、冷戦後の時代に適応するために、冷戦後の1992年に、「海上戦略」を改訂した「海上から」(From the Sea)を発表し、さらに、湾岸戦争後の1997年3月には「前進...海上から」(Forward...From the Sea)を発表した。この2編は私がここで紹介する最初の論文である。

 

この2編と、関連記事を読むと、1981年のレーガン大統領・鈴木首相の共同声明の時代を私は回想せざるを得ない。鈴木首相は、日本は日本領土及びその周辺千海里のシーレーンを守る意志があるとの声明を発表したが、その後で交わした日本人ジャーナリストや学者との会話を思い出す。また、1977年に私が海上自衛隊幹部学校に留学していた日々も思い出されるのである。

 

当時のジャーナリストは例外なく、「日本はシーレーンを守るために何を必要とするのか」と質問し、さらに「アメリカは日本に何を要求するのか」と質問した。1年間の東京での留学時代には、「学問から離れた自由討論」が建て前であったにもかかわらず、アメリカ人の私からみるとかなり格式張った1日から2日に渡る討論の時間が何回かあった。同級生は毎回のように、「アメリカ政府の取るであろう姿勢」を私に説明するように求めた。

ジャーナリストや同級生に対しても私はいつも同じ説明をしたものである。つまり、アメリカには、政府が取る唯一の姿勢などというものは存在せず、どんな問題にも「アメリカ一般の姿勢」などというものは存在しないということだ。そもそも明白な答えがあれば、最初から面倒はないのである。質問を提起したジャーナリスト、市ヶ谷で出会った同級生、ここで紹介する記事を書いた人々。この人達ほとんど例外なく聡明な人々であり、難しい質問に対するひとつの解答を捜し求めてる人々である。

 

しかし、様々な回答からは、将来、世界の経済2大国であり、海洋2国家であるアメリカと日が、どのような方向に進むべきかの明確な回答は得られない。最も重大な質問は、両国が海洋国である国民生活を保護する能力を維持しする意志があるかどうかである。

日米の少なくとも一方が、世界の貿易立国として、今後とも経済の繁栄を継続させるというならば、巨大な経済的利益を保護するための、海洋を基本にした世界戦略を考えねばなるまい。

 

どのような戦略ととるべきかは、意見が別れるだろう。

米国海軍内では、巨大空母の必要性について賛否両論がある。費用面から空母は見合わぬと言う人がいる。一方で、原子力潜水艦を支持するグループや、その他の艦艇を支持するグループがある。

アメリカ国内には、冷戦後の米国軍の役割は、主に人道的な方法によって、平和維持に取り組むことでしかないという人もいる。

ロシアについても意見は別れる。もはや日米両国の軍事的脅威ではないと言う人がいる一

 

 

 

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