日本財団 図書館


外に雄飛したことはなかった。また、国民性を見ても大陸的で開放性や国際性に乏しく、さらに、明治政府が大陸国家ドイツの法制などを模範としたため、大陸的性格があらゆる分野に及んであおり、日本を海洋国家と見ることはできない。日本は大陸に隣接した島国という半大陸国家という特性に加え、戦前は大陸国家のドイツ陸軍を教師とした陸軍を中心とした北進論と、海洋国家イギリスを教師とした海軍の南進論が対立し、最後は大陸国家の生存圏思想を奉じ、資源を100パーセント自給自足しようと「大東亜共栄圏」を造り、日本を破滅させてしまった。

 

(2)考慮すべき大陸国家中国の体質

日本の今後の国家戦略を考察する場合、隣国である中国の国家としての性格や体質を理解することが不可欠である。中国との関係を考慮すべき場合、最も重要なことは中国がどのような国際関係観を持っているかを明確にすることであるが、中国の国際関係観は自らを世界の中心と考え、周囲の文化的に遅れた民族を「東夷」、「西戒」、「南蛮」、「北狄」と位置付ける中華秩序の国際関係である。この伝統的な国際関係観から、中国は周囲の国々と対等の国際関係や貿易関係を維持したことはなく、周囲の国々を力で押さえ込み、半独立国としてしか認めず、「臣下の礼」をとらせる中国を中心とするピラミッチ型の従属的な世界観であった。このため貿易も「貢ぎ物」をもって朝貢し、それに対して返礼として「貢ぎ物」の価値に応じて品物が返される朝貢貿易しか認めなかった。

また、留意することは中国が自国の文化的優越感から「国家の領域は文化の浸透とともに拡大する。自国の文化を他国の領域内に広めると、その領域が自国の領域に加わる」や、「国境は同化作用の境界線である。国境は国家の膨張に応じて変動すべきものであり、その膨張がこれを阻止する境界線に出合うと、打破しようとして戦争が起こる」という帝国主義華やかなころに、ラッツェルやハウスフォーファーが発表した論文の論旨に合致した行動を、20世紀に至っても展開していることである。中国の領土に対する執着は大陸民族独特のものであるが、さらに、中国の場合は中華思想に裏付けられたものであるところに問題がある。中華思想を奉じる中国から見れば、進んだ文化を周囲の文化的に遅れた異民族に浸透させて、自国の文化に同化させ、中国的生活圏を拡大することが中国の使命であり、周辺の文化的に劣る異民族は歓迎するはずであると考えてきた。このため、中国には近世に至るまで国境の概念がなく、中国が最初に国境を認めたのは1689年に締結されたネルチンクス条約であった。この中国

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION