A 海軍力の機動性および持久性
艦艇は航空機、ミサイル、砲などの戦闘力やC3Iなどの各種指揮通信処理装置などを有機的に搭載し、世界的に広がる海洋を利用して、必要な時に必要な場所に急速に機動集中が可能であり、また、洋上補給を継続的に実施することにより、快適な生活空間と十分な戦闘力を長期にわたり維持し発揮することも可能である。アメリカの空母戦闘群(CVBG:Carrier Vessel Battle Group)は、1日に500から600海里の移動が可能であり、現代の戦争では30から60日後に展開される軍事量の絶対量よりも、早期急速に展開される対処兵力が重要である。この海軍力の機動性の一例をベトナム紛争に求めれば、1972年3月末の北ベトナムのテト南進が始まった時のアメリカの兵力は、ベトナム介入反対世論の高まりから徐々に兵力を引き上げており、小規模な海空軍兵力を展開しているに過ぎず、ベトナム沖の展開兵力は、コーラル・シー(Coral Sea)とハンコック(Hancock)の空母2隻、および巡洋艦・駆逐艦6〜8隻程度の小規模なものであった。しかし、北ベトナムの南進攻撃3日後には、フィリピンのスビック湾からキティホーク(Kitty Hawk)、7日後には横須賀からコンスタレション(Constellation)を戦列に加え、空母4隻、航空機275機の打撃力をベトナム沖に集結させた。その後もアメリカ海軍は本土西岸の第3艦隊、東岸の第2艦隊および地中海の第6艦隊などから続々と急派し、北ベトナムの侵攻3週間後には空母6隻、巡洋艦5隻、駆逐艦44隻および海兵隊5000人を乗艦させた揚陸艦を含む艦艇65隻、兵員46000人という第2次大戦後最大の海軍兵力をベトナム沖に集中した。これら艦艇の集中状況、すなわち展開速度とその規模は図のとおりで、その所要日数はスビック湾から2