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レィン(Sea lane)という言葉があるが、明確な規定はなく意味も曖昧である(8)。従って本論ではシーパワー(あるいは海洋力)を、「海洋をめぐる政治力・技術力・軍事力などが適切に組み合わされた力で、自国の権益の増進、国家目標の達成、国家政策の遂行などに必要な海洋の利用や支配を可能とする国家の力の一部」と、幅広く捕らえて論を進めることとする。

シーパワーとはマハン少将が、1890年に出版した『海上権力史論(The lnflunce of Sea Power upon the History)』で初めて導入した言葉であるが、マハン少将がこの言葉を規定していないため、多様な解釈が人によってなされて現在に至っている。しかし、海洋力を一言で表すならば、「制海権(海洋を利用し支配する力)」で、海洋力の大きさは次の6要素によって決まるとされている(9)。第1は国土が海上交通の要所にあるか否かの地理的位置、第2は国土が海洋に接し適当な港湾があるかなどの地形的環境、第3が領土の大きさ、特に海岸線の長さ、第4が人口数、第5が国民の海洋力に対する認識と熱意などの国民性、第6が海洋を利用し支配しようとする国家政策・防衛政策などの諸施策を遂行する政府の性格である。また、海洋力を構成するものとしては、第1は海洋の利用手段としての商船隊・漁船隊などであり、第2はこれらを保護する直接的強制力としての海軍力、第3はこれらを支える工業力、第4は港湾施設(海軍力の場合は基地)である(10)。しかし、最近では海洋資源に対する列国の国益追求が激しく、海洋資源などの確保をめぐる国際政治力、および海洋資源開発力などの技術力や資本力なども大きくクローズアップしてきた。

次に海軍戦力とは、海洋(海上、水中、海上上空、海底)を主たる活動の場とする軍隊で、領海における法の維持や強制、海上からの進攻作戦や阻止作戦などの軍事活動を使命とする軍種であり、これら部隊は戦闘部隊の航空母艦、巡洋艦、駆逐艦、フリーゲート艦、潜水艦、掃海艇や航空機、後方支援部隊としての洋上補給艦(給油艦・給弾艦・工作艦)など多種多様な艦艇から構成されている。また、アメリカ海軍などの戦略核兵器を保有する国家は、これら部隊を国家指導者が直接指揮する、SSBN(Nuclear Powered Ballistic Submarine)からなる戦略核部隊と水上艦艇、潜水艦、航空機、および海兵隊(ロシアは海軍歩兵・中国は海軍陸戦隊と呼称)なとからなる一般目的部隊に区分している。これら部隊は各機能に応じて、対潜戦、対空戦、対水上戦、機雷戦、対陸上攻撃、両用戦(上陸作戦-ヘリコプターによる上陸も含む)などの諸作戦や、これら部隊の戦闘力を発揮させるための特殊戦(特殊部隊の破壊活動)、洋上監視、哨戒、情報戦、電子戦などの補助的な作戦も実施している(11)。

 

 

 

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