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アジアの海洋は、どこをとっても対岸までの距離が400マイル以下であるため、沿岸国が200マイル海域を設定する場合、境界線の画定は避けられない。その結果、境界線画定の問題(EEZ及び大陸棚の双方)が、北東アジアの沿岸諸国の間に、現実のそして緊急の問題として浮上してきた。5

4.次の2つの理由から、北東アジア地域では、境界線の画定は特に困難である。第1に、この地域には、極めて困難な領土問題が存在する。この領土問題が解決されなければ境界線は画定できないが、その解決はありそうにない。第2に、1970年代の大陸棚に関する論争から見て、この地域において境界線を画定する上で何が適用しうる法であるかについて北東アジアの沿岸諸国の間の意見の対立は深刻であるようである。更に、この地域の地形の複雑さや海底のはっきりしない特性は境界線の画定を極めて困難な問題にしている。

5.同条約の影響は、もちろん、同地域内のどの国が加盟国となるかにかかっている。現在、実質的にはすべての沿岸諸国が加盟するようである。たとえ、海上の境界線画定に触れた条項が一般的で漠然としたものであったとしても、境界線画定に関しては同条約の発効それ自体は、ごく限られた影響しか与えないであろう。しかしながら、全ての沿岸諸国が同条約に加盟した場合、関連条項は適用されることになるので、それらを検討することは重要である。更に、海上の境界線をめぐる争いを解決するために、同条約の強制的紛争解決システムが発動された場合、最終的に適用されるのは同条約の中の関連条項である。

6.本論文では、まず同条約の境界線画定条項特に74/83条が、北東アジア地域における潜在的境界線問題に対して果して有効な指針となりうるか否かを検討し、次いで適用可能な法の観点から、未解決の問題点をいくつか検討する。精密な検討を必要とする問題点として、地理的環境、地形学あるいは地質学上の関連性、境界線画定にかかわる島の状態等が挙げられる。

最後に、境界線の画定に対する可能な代替案を提示することとする。

 

?U 適用可能な法

7.拡大した海洋管轄権の境界線画定について定めた条約上の規定を探し出すことは、新海洋法条約(UNCLOS?V)の最も困難な任務の一つであることが判明した。なぜなら、同条約の規定は新しい条約上の規定を制定することだけでなく、大部分で慣

 

 

 

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