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国防予算はレーガン政権の最初の任期(1981-1985)中に大幅増大した後は、予算の削減が続き、1989年12月、マルタ米ソ首脳会談で東西陣営間の冷戦終息を宣言した後、急速に減少の動きを見せている。ブッシュ政権は1992年に、中長期国防予算指針(1993-1997)を発表し、本案の核心的内容は1992年の基準から1997年まで米国防費を総額540億ドル削減する方針だったが、新たに執権を握ったクリントン政権は、今後5年間にわたって最低600億ドルを削減すると明らかにしている。新任のレースエスヒィン国防長官はさる3月23日、議会に提出した1994年会計年度の国防費を、ブッシュ政権が提出した2.800億ドルからさらに148億ドル削減すると確約した。具体的に見ると海軍と海兵隊は30億ドル、空軍は28億ドル、陸軍は25億ドル、そして戦略防衛構想(SDI)計画は25億ドルを追加削減することになっている。3またNATO駐屯米軍の数を1996年までに100,000名以下に、そして米軍全体を140万名に減らすことを計画していたが、追加削減は避けられないであろう。4

クリントン政権もまた、ブッシュ政権が推進してきた基本的な軍事改編作業の枠組みから逃れられないと思われる。軍事力の縮小化(drawdown)、再編成(reconstitution)そして統合運営(combined Operation)を中心に米軍の戦略改編に着手するとの見通しだ。既に公開されたように米軍の基本軍事力(base force)計画は、脅威評価の変化、続く国防予算の削減、そして大きく変化した安保環境に現実的に対応できる最低限の軍事力を想定した指針である。来国防総省が準備した基本軍事力の核心は、現在想定し得る危機にすぐに対応できる戦略を確保することである。だが、問題はこのまま削減される予算で、安全保障のために適切な軍事力を今後も確保しえるのかということにある。ステクプル米海兵隊太平洋司令部戦略企画部長は、最近米軍が直面している状況は、第二次大戦直後に断行された武装解除(demobilization)よりも、ある面ではもっと深刻な状況であると指摘し、動員解除された予算の枠内でハイテク武器を軸にした新しい戦略を構想することが最も肝要であると力説した。5

一方Myatt駐韓米軍副司令官は、米国は1995年までに現在の米軍数の1/3を削減するしかないと強調し、陸軍の場合は12師団、空軍は36飛行団、海軍は12航空母艦団、そして海兵隊は25,000名の兵力を縮減しなければならないと言及したことがある。6

 

3 ニューヨークタイムス 1993.3.27

4 Bill Clinton and Albert Gore,Putting People First(New York:Random House, 1992), pp.129-130.参照.

5 ステプル将軍は米国ワシントンで1993年4月29-5月1日まで開催された第二次韓米安保会議でこのように明らかにした。彼はまた米軍の今後の任務をより具体的にする必要があると強調し、国際連合平和維持活動と湾岸戦争が象徴した新しい軍事介入を例に挙げながら緊急配置軍と連合作戦を中心とした軍事活動を実行可能にする根本的な軍事改編作業が急務であると指摘した。

 

 

 

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