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済制度に従ってはいるが、共産主義がまだ残存しており、またベトナムがあり、特に北朝鮮はいまだに自分たちの体制が優れていると考え、核兵器開発で東アジアは勿論世界の安定に挑戦状を叩き付けている。

このように東アジアの国際戦略及び政治状況は、冷戦時代の単純明快さから、むしろ複雑多難になっている。冷戦時代には敵と味方の区別が明白であったが、ソ連の崩壊以後、また東アジアにおける米国の力が次第に弱まっている状況下で、誰が真の敵であり友好者であるのかがわかりにくくなっているのである。東アジアの伝統的な利害当事国である中国、日本等は、世界的な軍縮ムードに相乗りしているというよりは、むしろ米国とソ連の後退により生じた力の空白を、自分たちが埋めなければならないという強迫観念に陥っているかのように見える。世界の主要国家のほとんどが軍備を縮小している1980年代中盤以降から今日に及ぶ期間に、中国と日本はむしろ軍事力を増強しているのである。勿論北朝鮮も1985年以降、どの時期よりも速いペースで軍備増強に熱を上げており、韓国もこれに対抗していた。総合的に見て東アジアの4ケ国は、脱冷戦時代を迎えて以降、軍備増強を急いでおり、その動きはますます熾烈になっている。

このような状況の中で、韓国は新しい戦略と安全保障環境に直面をしており、これに備えうる準備を整えなければならないだろう。まず、韓国は、現在も社会主義体制を固守し、開放と改革を拒否している北朝鮮との競争から逃れられずにいる。脱冷戦時代が到来したにもかかわらず、北朝鮮は、核兵器まで動員することで朝鮮半島問題を軍事化し続けている。このような冷戦対立構造がそのまま存在している一方で、朝鮮半島の周辺国が尋常でない軍事力強化の動きをみせている。特に中国の外洋型海軍(Blue Water Navy)の建設への努力、日本の持続的な軍事費増加等は、韓国の安保政策決定に重大な影響を及ばす要因になっていくであろう。このような状況下で本研究は、主に朝鮮半島の周辺国家の海軍力変化と、これに対して我々はどのように対応しなければならないかを主題に研究しようとするものである。第二章から第五章までは、ソ連、米国、日本、中国の海軍力の変化、現象を記述、説明しようとするものであり、このような力の変動状況で、韓国の海軍力はどのようにあるべきかについて概略的な方向を提示しようとするものである。本研究はまず、現状を述べることに重点を置き、各国の海軍力がどう変化しているかその様子を描き出すことを第一の目標に据えた。現在を冷戦時代から脱冷戦時代に移行する転換期と見て、韓国の海軍政策に関しては具体的な青写真の提示でなく、海軍力建設の概略的な方向の提示に留めることにした。

 

?U.冷戦後の米国の海軍戦略

 

 

 

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