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東アジア中部海域の境界と国連海洋法条約

 

I.序:国連海洋法条約の発効

 

境界画定が最も難しい海域の一つが東アジア中部の海域である。この海域は、南シナ海、東シナ海、日本海及び黄海からなり、中国、台湾、日本、北朝鮮、韓国、フィリピン、インドネシア、ヴィエトナム、マレイシア、ブルネイ及びロシアといった諸国に囲まれている。この海域の殆どの境界は未だに画定しておらず、その努力も進展していない。境界を巡る紛争も頻発しているが、境界画定以外の方法による解決の可能性も模索されている。

境界画定に関し、最近3点の進捗があった。第一に、1994年11月16日に「国連海洋法条約及び同条約第11部の深海底に関する実施協定」が発効した。第二に、沿海諸国の政治関係が変化し始めた。第三に、海洋に関する国際法が進歩した。これらを受けて、紛争の解決について数年前より見通しが明るくなった。しかし少なくとも短期的には境界画定以外の解決の可能性も大いにあり得るであろう。

国連海洋法条約の境界画定に関する規定は一般的なもので、紛争解決に与える影響は小さい。同条約では、「沿岸国は、大陸棚と排他的経済水域(EEZ)の境界画定について、衡平な解決を達成するために、国際司法裁判所規程第38条に規定する国際法に基づき合意により行う」(同条約第74条及び第83条)と定めているのみである。他方で、同条約は一般国際法として確立しつつあり、紛争解決及び島や岩礁等に関する規定は、将来の東アジア中部の海域画定に影響を与えるかもしれない。

同条約の影響力は、どの国が締約国になるかにも左右される。これまでインドネシア、フィリピン、越は既に同条約を締結しており、他の沿海諸国も締結する見込みである。批准が進み、締約国が増えれば、一般国際法として同条約の海域の画定に対する影響力も増大する。更に、同条約の強制的紛争解決手続きも適用されるようになれば、右は間接的に紛争解決に繋がるかもしれない。

 

?U.海域の境界に関する一般的問題

 

1.島及び島嶼部

(1)領土紛争

 

 

 

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