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れの国々は、只乗りすることを望み、沿岸諸国がすべての経費を負担することを期待している。もし、航路を利用して利益を得ている海峡の利用者側が、海峡の航行の安全を確保し、環境保護の支援のための資金面での貢献を行こなう用意がなければ、沿岸諸国に対してこれ以上の投資をうながすための動機は殆ど失いそうである。何かそれ以上のことをしようとする沿岸諸国が、落胆から、これらの海峡の通行を厳しく制限することはできる。こうなれば大問題である。アクセスの封鎖は、常に単に想像上の問題にすぎない。

 

○結論

安全保障の問題は、絶えず流動しており、これらの結論はあくまでもせいぜい暫定的なものである。多くの問題に対して判決が下された訳ではなく、また断定を下すには早すぎる。いずれにせよ、この全体としての文脈の中でこの地域は、海洋の安全保障の面での不確実な将来に直面している。海上における問題--領有権の対立、EEZの重複、あるいは稀少資源をめぐる競争--は複雑である。この地域における大規模な紛争の可能性は、この際低いものの、小規模な抗争の可能性については完全には排除できない。

この地域内で安全保障問題をめぐって紛争を起こしそうな国は、中国、日本、米国、朝鮮及びASEAN10か国である。時代にとっての救いは、これらの諸国が現在、相互依存と国際化への道を強めつつあることである。願わくば、経済的相互依存が更に大規模な地域的海洋における安全保障へつながることである。確実なものは何もない--これまで歴史が直線をたどったことは一度もないからである。

本論は、この地域がどんな犠牲を払ってでも回避しなければならない安全保障問題を2つ採り上げた。第1は、中国と米国を含めた第2次冷戦の再発生である。マスコミが過度に中国を悪魔の国家に仕立て上げることは、サミュエル・ハンチントンが想像した文明の衝突につながりうる。この地域の誰にとっても冷戦コストは高すぎるので神は冷戦を禁じ給うた。

第2は、第1の結果として、日中両国間の対立のお膳立てである。このアジアの2大国は、おたがいに戦ってはならない。アジアは更なる軍事紛争(少くともアジアの国どうしの紛争)には耐えられない。

第2次冷戦及び日中戦争はアジアの災害にとってのレシピである。戦略を研究するすべての人に対する挑戦とは、平和な環境に対して最小限の混乱ですむような方法によって避けられない変化を処理できる適応可能な技能を修得することであろう。しかし、戦略の本

 

 

 

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