警備するのは不可能である。しかし、継続的にカバーする必要はない。むしろ、海軍は重要な海域に適時に、かつ合理的な成功の機会を提供するために複合部隊を動員して兵力を展開できなければならない。ここで再び中国が、広大な海洋を監視し、それに対応するシステムを開発するというソ連のやり方に目を向けるのも当然のことである。そうすれば、潜在的な敵グループの位置と組成に関する警報を発し、それに対応した兵力配備に対し指示を与えることができる。長距離警報はレーダー、パッシブ探知・映像センサーから情報を得られる専用の海洋監視衛星を使うことによって達せられる。次いで、長距離哨戒機によって最初の位置、追跡データが更新される。反応兵力に関しては、中国軍が統合訓練に重点を置いていることを強調することは、彼らがゴルシコフのマルチシステム・ドクトリンの要素を採用しているという見積りと一致している。故に中国軍は、爆撃機/水上艦/潜水艦の協同攻撃能力の開発に努めるものと見られるが、その場合老朽化したB-6/Badgerを更新し、AWACS機の取得が求められるであろう。この目標を支持して、張連忠中国海軍司令員が認めた長距離通信と航法システムは、広域の、タイミングを調整した武器発射能力を得る鍵となるであろう。本土海域付近にある目標に対して航空攻撃を行う場合には、FCA(陸上攻撃用戦闘機)タイプの航空機の有効性は、空中目標位置局限・攻撃指示システムの取得によって大幅に高まるであろう。
40.両用戦能力の増強が現在行われている。新しいYUTING級LSTが4隻建造され、新しい級のLSMも建造中と伝えられている。この増強計画の全体の規模は分からないが、中国海軍がソ連の海軍戦略を純粋に踏襲するなら、それは恐らく近い将来かなり控えめなものとなるであろう。中国が長距離両用戦力投入に伴う問題点とリスクを認識していることは疑いもなく、敵国の戦闘能力を無力化するには他の方法を取る方が安全で、達成しやすいと決めているのではないかと見られる。一つの可能性は、両用戦兵力の将来の二つの主な任務として、南沙群島及び西沙諸島の島をさらに占拠することと、緊張が高まっている間にすでに駐屯している兵力に増援を送ることである。揚陸すべき兵力の水準はもちろん小さい力がよく、先に触れた北京寄りの雑誌の記事にもあるとおり、占領後の島の防衛には極めて問題が多い。純粋に軍事的にはそうであるか、中国の指導部は将来強力な海洋能力が開発された場合のために、もっと狡猾な哲学を立てているかもしれない。ことに、島の兵力がいかに軽装備だとしても、いずれかの国がこれに攻撃をかけた場合には中国そのものに対する攻撃と見なされ、大規模な報復の危険を招く。興味があるのは、「海に引かれた線」-これをを超せば攻撃するという-の考え方がゴルシコフのドクトリンにも使われていたことである。劉華清は、「海域の制圧はそれ自体が目的ではなく、後に続く戦闘兵力に良い条件を与えるためのものだ」というゴルシコフの考え方を思い出したかもしれない。この場合、中国軍は島や環礁というこの強力なものを重大な目標としては考えていない可能性がある。
41.今や中国の軍事的意図を最も言い当てているのは軍事科学院の廉振玉上将がまとめたものであろう。「中国は、海岸及び島嶼へ強力な哨所を建設することも含めた巨大な中国の壁を新たに海洋に巡らさなければならない」と廉上将は述べた。この目標は明らかに公言された前進防衛戦略に沿ったもので、より広大な戦略を将来適応することとは違い、今日の実質上の軍事的優位をさすものである。