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構想を更に示すものかどうかは確かめることはできない。しかしその中の情報は大変詳細にわたっており、現在のドクトリンをかなり正確に表した記事であることを示唆した。これはヴェールで隠された脅しの可能性があり、単にフィリピンだけに向けられたものではなかったであろう。第一に、示唆された兵力の水準はフィリピンの小さな海軍を圧倒するのに必要なレベルよりはるかに大きかった。第二に、その記事にはフィリピンのほかにマレーシア、インドネシア及びベトナムを名指しながら、「南沙群島紛争に係わる諸国はむやみにその海軍と空軍を拡張しつつある」と書かれていた。この記事は中国の実際の意図が流れたものとすれば、そこには隠された問題が含まれると考える。すなわち、一つの国との領土紛争がより広い地域紛争に発展し、従って一層能力のある敵対勢力を生じさせる状況である。注目に値するのは、この可能性をトウ小平がその1985年の軍事論文で挙げていることである。

 

19.記事に描写されている部隊は南シナ海艦隊の指揮下に編入され、艦艇は必要に応じて他の艦隊から振り替えられることになっている。兵力の中核は6〜8隻のミサイル駆逐艦から成るようである。防空の必要性を強調し、この計画はLUDA級駆逐艦を必要としている。これにLUHU級1隻とLUDA-II級数隻を追加した。10〜15隻のフリゲートが望ましいとされ、時間が許せばさらに追加の能力を備えるべきとの意見を含め防空能力の必要性に更に言及している。誘導ミサイル艦の総数は24隻から48隻の間(したがって、おそらくHUANG級やHOUXIN級のような小型の戦闘艦艇が含まれるのであろう)とされ、これに30隻の哨戒艇と駆潜艇が加わる。

 

20.この部隊は強力な対水上戦能力を保有するだろう。多数のC-801 SSMが配備され、インドネシアのHARPOONを発射可能なVAN SPEIJIK級FFGを除いて、敵のSSMすべてより長射程であろう。逆に言えば、中国は防空能力を重視するにもかかわらず、全体としての能力は貧弱であると思われる。火砲は別として、中国が持っているのは一部の駆逐艦とフリゲートに装備されているCrotaleとCSA-N-1(射程5.5NM)システムだけである。敵対兵力はSSMの他に、300機以上のFGAタィプ戦闘機を動員できることを考えれば、PLAが極めて脆弱なことは明らかである。

 

21.10から16隻の潜水艦が同計画には含まれ、南沙群島海域での長い哨戒時間と敵潜水艦兵力を上回る能力が必要であるため、混成部隊にはHAN級SSN 2隻を含むべきであると述べている。これは印象的な大部隊であり、潜水艦の相手となり得るのはインドネシアの2隻の209級だけであるから、潜水艦の多くに対水上作戦任務を付与することができる。1隻(当時)のKILO級と多分、1隻のSONG級を別にすれば、兵力の大部分は古いROMEO級及びMING級ディーゼル潜水艦から成るであろう。これらは電池を充電するためにしばしばスノーケルを使わなければならないので、極めて静かな209級の水上ASW部隊と洋上哨戒機に対しては脆弱と思われる。SSNはより大きな脅威を与え、その水中高速深深度潜航能力及び長時間潜航能力を用いて追跡に対抗することができよう。全体として、潜水艦は相当な損害を与える潜在能力を持ち、対水上作戦から水上部隊をそらす。そして巧妙に指揮すれば、潜水艦の水上カウンターパートよりも高い残存性を示すであろう。

 

 

 

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