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被害者意識を伴った国防観には充分に留意する必要があろう。

 

4中国の戦争観および戦い方

中国の戦争観の特徴は古代の兵法と現代の兵器が並列するもので、第1の特徴は伝統的な『孫子の兵法』の、「不戦而屈人之兵 善之善者也(戦わずして人の兵を屈するは、善の善なるものなり)」との権謀術数などの政治手段を重視するの「不戦の戦略」である。しかし、中国は西沙群島や南沙群島の占領、チベットの弾圧など、必要とするときには躊躇なく「兵勝貴 不貴久(兵は勝つを貴ぶも久しきを貴ばず)」と、圧倒的な軍事力を使用して短期間に活着を着ける一面ももっている。また、中国の戦争で目立つのが自己正義感で、中国軍事科学院の張聿法などが作成した『局地戦概観(21)』には、チベット民族の弾圧を、「チベットは、中華人民共和国の神聖な領土の一部である」。進駐した人民解放軍は「真剣に『三大規律八項注意』を実行し、広汎なチベット族人民の支持と熱情あふれる歓迎を受けた」。が、しかし、「チベット上層部反動集団が反革命武装反乱を起こしたので鎮圧した」と記述され、「チベット反乱平定作戦」との名称が付されている。また、1979年のベトナム領内への侵攻作戦は、「祖国の国境を守るために、ベトナムの地域的覇権主義に対して自衛反撃作戦を行った」ものであり、この戦争によって「ベトナム侵略者を処罰する目的を達し、中国人民解放軍の歴史上に壮麗な一章を加えた」と自賛している。

また、西沙群島や南沙群島の占領については、南ベトナム反動当局が「神聖な中国領土」を、不法に占領したので「自衛反撃を行い、占領された島嶼を回復した」と、「自衛反撃作戦」との名称が付けられている。また、ここで留意すべきことは、領土問題に対しては同じ漢民族としての連帯感から、台湾と中国が共同行動を取ることである。すなわち、1988年12月に広州で開かれた、「南沙群島収復42周年記念座談会」に出席した台湾の海軍副参課長王祖暁少将が、「現在、中国人民が南沙群島の6カ所の岩礁を防衛し、他方、台湾海軍が長年にわたり大平島に駐留していることは、中国人民解放軍海軍と台湾海軍が共同で南沙群島を防衛していることであり、同じ立場に立っている」と語り、ベトナム軍が攻撃してきた場合の対応を記者から質問されると、「援助する」と回答しているからである(22)。

なお、中国軍事科学院研究員が作成した『局地戦争概観』によれば、中国が第2次大戦後に行った戦争は次の通りである。

 

 

 

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